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【阪神】「西武よりヤクルトのほうが怖い」1985年の日本シリーズは池田親興発言の記憶とともに

交流戦 指名対決 テーマ「1985年の日本シリーズ」 文春野球コラム ペナントレース2017

2017/06/13
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「西武よりヤクルトのほうが怖い」西武を完封した池田親興の強烈コメント

 一般的に、あのシリーズにおける阪神目線の名場面といえば初戦の池田親興の完封、バースの3試合連続ホームラン、第6戦の長崎啓二の満塁ホームランなどが挙げられる。私は少年時代の記憶をたどりながら、あらためて当時の新聞記事を掘り起こしてみた。

 すると、個人的にもっとも目を引いたのは上述の池田の記事であった。確かにあの完封はよく覚えている。当時の池田は今みたいに太っていなくて、ルックスもマッチ(近藤真彦)に似ていて、子供心にもかっこいいと思っていた。阪神は掛布や岡田(彰布)、川藤(幸三)といったパンチの効いたルックスの選手ばかりが目立つけど、池田や真弓(明信)みたいにシュッとした選手もおるんやぞ――そんな少年ならではの主張を心に秘めていた。

 だから、当時は有頂天になって気づかなかったのだろう。この完封劇のあと、池田は新聞記者から西武打線の印象を質問され、こんな談話を残していることに。

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「元気がなかった。あれならヤクルトの方が怖いですよ」(朝日新聞1985.10.27)

 そう、1989年の日本シリーズで物議をかもした、かの有名な近鉄・加藤哲郎の「巨人はロッテより弱い」発言よりも4年も前に、池田が同様の発言をしているのだ。なお、同年のヤクルトはセ・リーグ最下位。89年のロッテもパ・リーグ最下位であった。

 しかも、加藤の発言はのちに実際は言っていなかった(記者の誘導尋問から生まれた脚色だった)ことが明かされ、当時の新聞にも加藤の“正確な談話”としては記載されていないのだが、この池田の談話はしっかり記されている。

 そう考えると、この発言があまり話題にならなかったのは、やはり日本シリーズで阪神が勝利したからだろう。池田発言以降、もしも西武打線に火がついて阪神が日本一を逃していたら、あわや池田も舌禍騒動の主として時の人になっていたかもしれない。後世に残る発言と風化する発言、その分かれ目には試合結果も深く関係しているのだ。

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