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【楽天】構成作家の野村克也監督と演出家の星野仙一監督

交流戦 指名対決 テーマ「野村克也と星野仙一」 文春野球コラム ペナントレース2017

おいしい所を星野監督がもっていったのではない

 阪神タイガースと楽天イーグルスを語る上で避けては通れないのは、やはり野村克也、星野仙一両監督の話だろう。

 阪神時代1999年~2001年までの3年間、野村克也監督がチームを率いるも3年連続の最下位、その後星野仙一監督が就任し2003年にリーグ優勝した。楽天でも 2006年から2009年までの4年間を野村監督が率い、1年のブランク、いやいや、ブラウン監督をはさんで星野監督が就任3年目の2013年に日本一になっている。

 この成績について、野村監督が選手に野球というものを基礎から教えこみ、チーム力がついてきたおいしい所を星野監督がもっていったという意見をよく耳にする。皆さんはどうですか? 野村再生工場で最も輝きを取り戻したのが星野監督であると思いますか?

 僕はそれは少し違うのかなぁと思っている。確かに野村監督からバッテリーなら細かい配球の組み立て、バッターなら色んな条件を加味した上での狙い球の絞り方など、細かい野球の基礎を叩き込んでいただいたのかもしれないが、それをふまえた上でどのような心づもりで実戦に向かうのかという精神的部分の指導はあまり耳にした事がない。

 そしてそれを身体に叩き込んでくれたのが星野監督だったように思う。僕らお笑いの世界で例えるなら、ここはもう一度同じ言葉をかぶせる(てんどん)とか、泳がせといて3回目で突っ込むとか、色んなお笑いのルールや知識をよく知っている構成作家さんがいるが、その人が必ずしもおもしろい人ではないし、ましてやその人の言うことを聞いて売れるとは限らない。

 大事なのは、それをたくさんのお客さんの前や、カメラの前でうまく表現できるかどうかである。その点で言うと一線で活躍している先輩や演出家(ディレクター)の言葉には妙に説得力がある。「知ってる」と「できる」は別なのだ。

演出家の星野仙一監督 ©文藝春秋

失敗のスポーツだからこそ大事なこと

 よく野村監督が阪神でいえば矢野燿大捕手、楽天でいえば嶋基宏捕手に「あそこに要求した根拠を答えろ」と問いただしていたという話は有名であるが、答えられなければ勿論ダメ、答えが間違っていたら、野球がわかっていないとなる。

 これ、お笑いで考えたら、収録終わりで構成作家さんに「なんであそこでボケたのか根拠を答えろ」「自分、お笑い全然わかってないやん」。想像するだけでゲロがでる(笑)。

 ベンチやカメラの後ろでは感じられない、グラウンドや舞台上でしかわからない空気感というのがある。野村監督はプロ野球歴代2位の3017試合出場をはたしている最もグラウンド内の空気を知っている方なのに「その配球は違う」「なぜあそこであんなバッティングをするんだ」とぼやくものの、その配球の後どうするか、あんなバッティングをした後どうするかの話は聞いたことがない。一番大切な、失敗した後どうするかの話だ。

 僕たちお笑い芸人も、舞台でスベったり、番組でうまくコメントができなかったり、オチで噛んだりと失敗する事は日常茶飯事、その失敗の原因究明なんて始めると、さっき出来ていたことさえ出来なくなる。僕の芸歴20年そこそこで学んだ事は準備さえしっかり出来ていたなら反省はしないということ。失敗は2秒で忘れて次の成功を貪欲に探しにいく。

 野球なんてバッターなら10回中7回失敗しても一流といわれる世界だ。いわゆる失敗のスポーツである。ならば、その一度の失敗の原因を細かく究明する事も大事だが、長いシーズン、野球人生、しっかり切り替え、次どういう強い気持ちで試合に向かうのかのほうが大事なはずである。

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