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【金融・相続特集】いま検討したい「資産運用」と「相続対策」

普通預金に預けていてもほぼ増えない環境が継続する一方で、6月1日からハガキやビール、バターが値上げされるなど、私たちの生活は少しずつ厳しさを増している。将来に備えた資産形成や資産防衛を検討したいところだ。相続税の課税対象者も増加しており、生前からの準備が問われている。ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏にアドバイスしてもらいながら、いま検討したい資産運用と相続対策について考えるとともに、その受け皿となる商品やサービスを紹介する。

貯蓄から資産形成への流れ加速 守りの資産として金を活用

政府も個人の資産形成を後押し

ファイナンシャルプランナー
深野 康彦氏
ファイナンシャルリサーチ代表
個人のコンサルティングを行いながら、メディアを通じて投資の啓発や家計管理の重要性を説いている

 現在の世界の景気動向は、国・地域によって差はあるものの、全体として不況感は薄く、緩やかな拡大基調が継続している。日本の上場企業の2017年3月期を見ると、売上高は減ったが円高を克服し、純利益は2年ぶりに過去最高益を更新した。その一方、頻発するテロや北朝鮮リスク、トランプ政権の先行き、欧州の国政選挙、最高水準を更新した米国家計の借金など、景気や株価に影響を与えるリスク要因は、世界中に数多く存在する。

 ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏は「預金金利が上がらない中で、生活実感としてはもはやデフレとはいい難く、将来に備えて資産運用を検討したいところです。各種経済指標は好調ですが、調整局面はたびたび訪れるでしょう。リスク管理を徹底した運用が求められます」と話す。

 個人の資産形成の中核商品として真っ先に思い浮かぶのは、投資信託だ。投資信託とは、複数の投資家から集めた資金を大きく一つにまとめ、複数の株式や債券に分散投資し、そこから得た運用成果をそれぞれの投資家の投資額に応じて還元する金融商品。商品によっては1万円以下で始められる手軽さや、日本にいながら世界中の株式や債券に分散投資できる点が最大のメリットと言えよう。

 投資信託協会の発表によると、2017年4月の公募投資信託の残高は98兆8353億円と8カ月連続で増加した。これは1年5カ月ぶりの高水準であり、増加の背景には4月末にかけて株価が上昇したことや、海外株式投信への資金流入が目立ったことなどがある。政府主導の「貯蓄から資産形成へ」の掛け声のもと、投信を利用して将来のためにお金を増やそうと考える個人は着実に増加している。

 政府も投資信託を活用した個人の資産形成を後押しする。14年1月には少額投資非課税制度(NISA)、16年1月からはジュニアNISAがスタート。17年1月からは、個人型確定拠出年金「愛称:iDeCo(イデコ)」に20~60歳のほぼ全員が加入できるようになった。こうした非課税制度を活用するには、投資信託を使うのが合理的だ。さらに18年1月からはつみたてNISAも始まる。

人それぞれ異なる運用目的 ニーズに合った商品選び重要

 つみたてNISAの対象となる投資信託には一定の要件を設けているが、約5400本ある既存の株式投資信託のうち、この要件に当てはまるのは約50本と全体の1%以下しかない。しかも要件ではコストの低さを重視しているため、50本のうち、アクティブ型投資信託は推計によればわずか5本程度だ。これを受け、厳しすぎるとの声が業界から上がっている。

「少し高めのコストを支払っても、それに見合う十分なリターンが期待できる、魅力的なアクティブ型投資信託はたくさんあります」と深野氏。そもそも資産運用の目的は人それぞれ異なる。できるだけ運用コストを抑制して長期で保有したい人もいれば、多少コストを払っても高いリターンを追求したい人もいるだろう。自分の投資目的やリスク許容度に合った商品を選ぶことが肝心なのだ。

 投資信託の販売会社の中には、公平・中立な数値で既存の投資信託を評価・分析し、投資家のニーズにあったものを提案してくれるところがある。「どれが自分のニーズに合った投資信託かわからない」「いま保有している投資信託を公平・中立な立場で見直してほしい」という場合などは、相談するといいだろう。

 

価値がなくならない金 純金積立で付き合う

 不確実性が高まっている昨今では、資産運用における守りとして金(きん)にも注目したい。株式や債券といった紙の資産(ペーパーアセット)には、事業会社や国というように発行体がある。発行体の信用が著しく低下すると、ただの紙切れになってしまうリスクが伴う。一方、金は実物資産であり発行体は存在しない。値動きはあるものの無価値になることはない。

 希少性も金の魅力だ。有史以来、発掘された金は約18万トン。これは50メートルプールの約3.5杯分に過ぎない。現在地球上に埋蔵されている金塊のほとんどが海底に沈んでいるため、発掘するには莫大なコストがかかる。そのため、金の生産量が増え続けることない。

 とはいえ、金地金を購入するにはまとまった資金が必要。そこで検討したいのが毎月定額で少しずつ金を積み立てていく純金積立だ。深野氏は20年以上もこの純金積立を継続しているという。「収益を生まない金はポートフォリオにおける守りの資産。投資資金の1割程度を目安に保有するといいでしょう。くれぐれも株式や債券、投資信託が不調の時に輝いてくれる資産であることを忘れないでください」とアドバイスする。

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