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「痛々しい。やめろ」とTwitterで罵声が

 結局、市川紗椰がメインのニュース・コンシェルジュ、モーリーは週に3回出演するコンシェルジュというキャスティングで番組が始動。ピリピリした中での出発だった。ぼくはけして大麻やコカインの話題を口にしないことを心がけた。当初の「ショーンK」をメインに立てた番組構想から微妙にずれた状態での見切り発車だったため、当然のごとく、番組の歯車はなかなか噛み合わない。

「痛々しい。やめろ」

 の罵声が毎日のようにツィッターに溢れるのを番組終了後に確認した。東スポは

 「フジ『ユアタイム』MC市川紗椰 9月降板へ」

 という見出しで記事を放つ。野次と罵声を浴びながら、ワンクールが進んでいった。てんやわんやの局面もあった。だが番組の制作スタッフや出演者が逆境の中でも倍の努力を続けた結果、チームワークは着実に凝固し、一度は5.6%の視聴率を出したこともあった。「ワンクール終了説」は次第に鳴りを潜めていった。

テレビ局も「ウソ」に気づいていたはずだ

「ショーンK」という架空の存在を名乗った人物は、メディアの階段をどんどんと登って行った。今も「判官贔屓」の心理で数々の「ショーン、カムバック」の意見が聞こえてくる。

「本物のハーバードMBAでなくても、番組はそつなくこなしていたんだし、品はいいわけだし、それなりに使えばいいじゃないか」

 と。しかしこの判定は間違っている。ハーバードのMBAや海外留学を詐称し、それで甘い汁を吸うことは、がんばって本当に資格を取った人から機会を奪うことになるからだ。また、報道を扱う番組で視聴者をも欺いている。さらに言えば、テレビ局の甘すぎるチェック体制を増長させる。テレビ局は「ショーンK」の国際人ぶりが嘘っぽいものだと、薄々わかっていたはずだ。でも便利だから使い続けた。こういう業界の体質は一度きちんと検証し、自浄することが望ましい。

 さらに

「偽物のハーフでも、それっぽければいい」

 とする採用基準は、本物のハーフをバカにしている。というか、ハーフをコモディティー、つまりモノ扱いしている。最後に「ショーンK」を名乗ったホラッチョ自身の人格を地に叩き落としている。そこまで自身の存在を否定し、望ましいハーフのセレブになりすましてまでテレビに出続けたいのか。他に何もないのか。ないのなら、仕方ないが。

ショーンKの英語は「bull shit=適当なでたらめ」

「ハーフ・タレント」という存在には、いくつもの隠れた付録がついてくる。そこには日本社会に無言で定着した「人種の序列」や「優生学」の価値観がこびりついているのだ。まず、ハーフ・タレントは一にも二にも、日本人を脅かさない。本来、外国の文化や価値観を身に着けたハーフたちは日本人の同質な意識に楔を打ち込み、その都度脅かす存在であるはずだ。しかるに、テレビはさまざまな手品の手法で、日本人の視聴者が見ていて小気味いいハーフ・タレントを演出し続ける。「日本人でよかった」と思わせてくれるハーフたちは、その存在そのものが自己矛盾している。

 ショーンKが満足に英語の会話をできず「bull shit=適当なでたらめ」で乗り切っていたことは、外国人がインタビューをすればすぐにわかったはずだ。ぼくはTOKYO MX TVなどでご一緒した時に違和感を感じていた。だが、お互いの詮索になるので、スルーした。加えてTOKYO MX TVのプロデューサーは「ショーンK」を可愛がっていたので、あえて水を差すのも野暮であり、沈黙した。プロデューサーたちを大喜びさせる「ショーンK」のマジックとは、肩書の羅列だった。ハーバードのMBA、ソルボンヌの留学経験、世界中にコンサルの支店を持ち、イケメンとイケメンボイスは女性の憧れの的、真の「勝ち組」……そんな都合の良い幻想を「ショーンK」という存在が体現していた。「ショーンK」の利便性が信ぴょう性の薄っぺらさを上回った結果、引く手あまたとなったのだ。