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連載THIS WEEK

坂下 秀之
2016/04/09

オバマ大統領は歴史に名を刻むか
広島訪問の現実味

source : 週刊文春 2016年4月14日号

genre : ニュース, 国際, 政治

核安全保障サミットで話すオバマ大統領
Photo:Kyodo

「核なき世界」を掲げるオバマ米大統領の肝煎りで、ワシントンで開催されていた「核安全保障サミット」が4月1日、閉幕した。それと前後するように、オバマ氏が5月に開かれる伊勢志摩サミット出席に合わせて広島を訪れる可能性が囁かれている。実現すれば、米大統領の被爆地訪問は初めてのこと。

 オバマ氏は2009年11月の大統領としての初来日時、広島、長崎訪問の可能性について「実現できれば非常に意義がある」と意欲を示した。だが、米国内では原爆投下は太平洋戦争終結のためやむを得なかったとの正当化論が根強く、退役軍人団体などが訪問に反対していたため、見送られてきた経緯がある。

 今年のサミット開催地選考にあたっては実は広島市も有力候補の一つだったが、米側は「大統領が被爆地を訪問するかどうかは機微に触れる問題。日本側の意向に従う格好は望ましくない」と難色を示した。ホワイトハウス関係者は「オバマ氏が自主的に訪問を決断する余地を残しておきたかった」とも明かす。

 昨年末の従軍慰安婦問題をめぐる日韓合意では、米国が日米韓連携のため「過去の清算をすべきだ」と日韓双方に和解を強く促した経緯がある。日本政府内には、オバマ氏も被爆地を訪問することで原爆の問題に区切りをつける意向では、との期待感もある。

 昨年8月、広島市の平和記念式典に国務省高官として初めて出席したガテマラー国務次官も先月、ホワイトハウスがオバマ氏の広島訪問を検討していると明言した。国務省は大統領の広島訪問を推奨するレポートも提出している。

 ホワイトハウスはオバマ氏の広島訪問の是非を、4月10日から広島で行われるG7外相会合後に最終判断する見通しだ。ケリー国務長官も他の外相と一緒に平和記念公園を訪れ、原爆慰霊碑に献花するが、その際の日米双方の世論の反応を探る必要がある。

 一方で、大統領選で共和党候補を目指すトランプ氏やクルーズ上院議員はイランとの核合意やオバマ氏のキューバ訪問を盛んに批判しており、広島訪問も攻撃材料にされるのではとの懸念もある。

 残り任期1年を切ったオバマ氏が被爆地訪問を自らの「遺産」に加えるか否か、結論は間もなく下される。