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マクドナルド、どん底からの復活劇 背景にあった“6つの視点”

2017/06/30
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業績回復を牽引した“遊び心”に富んだキャンペーン

 さらに、「かけてとく」の要素――ウィットや頓知に見られる、機知とリアルタイム性に富んだコミュニケーションも多く見られる。実はこれは、日本のPRにまだまだ足りない部分なのだが、マクドナルドの復活劇では存分に遊び心が発揮されている。代表的なのは、トッピングによる「裏メニュー」であり、お笑い芸人のダンディ坂野さん扮する「怪盗ナゲッツ」を起用したキャンペーンだろう。これまでどちらかというと、真面目なコミュニケーションが目立っていたマクドナルドだが、復活劇ではユーモアに富んだキャンペーンなどのユニークな試みで話題をつくったのである。

 ここまで見てきて、いかがだっただろうか。どん底からの急速な復活の背景には、戦略的な情報発信があり、それがマクドナルドを取り巻く空気そのものを変えていった。ネガティブな空気が、2年がかりでポジティブな空気に変わっていったのだ。

 最後に、戦略PRを成功させる、もうひとつの要素である「おおやけ」についてご紹介したい。ひと言で言えば、社会性や公共性である。世の中のニーズや社会課題と自社や商品を結びつける視点であり、PRの基本所作でもある。

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©iStock.com

 マクドナルドの場合、どうだっただろうか。売上げも評判も地に落ちた2014年からの復活はそれ自体が「おおやけ」のニュースであり、ドラマだった。日本人の多くは“復活劇”が大好きでもある。だが、業績不振から脱却しようとあえぐ企業がすべて注目されるわけではない。では、マクドナルドは何が違ったのか? それは、マクドナルドの広報担当者が足元の数字や今後の取り組みをしっかり開示し続けたことに尽きる。復活のきざしをつかみ、復活劇を追いかけたいメディアと世間に対し、正しいタイミングで情報を提供していたからに他ならない。マクドナルドの復活は、衆人環視の「おおやけ」ストーリーだったのだ。

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本田 哲也(著)

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2017年4月12日 発売

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