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【阪神】あの藤川球児が敗戦処理に近い仕事もこなすことの意義

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/06/23

藤川球児は今でも虎の守護神

 もちろん記録がすべてではないため、セーブ数うんぬんは藤川の現在地を示す指標のひとつにすぎない。本当に重要なのは、今季の藤川が金本阪神の歯車となって、与えられた役割を淡々とこなしているということだ。クローザーでもなければ、勝ちパターンのセットアッパーでもない。阪神リリーフ陣の中で、ある意味もっとも心身の疲労がたまりそうな地味な仕事を、もっとも実績のある最年長の大功労者が粛々と片づけている。

 この懸命な姿を見て、胸を打たれない後輩投手はいないだろう。桑原も高橋も岩崎もそうだ。マテオだってドリスだってそうじゃないか。普通の感覚の持ち主なら、これ以上ないほど張りつめた緊張感や高揚感の中で、自分の出番を待っているはずだ。

 確かに、藤川の起用法に異論のある人もいるだろう。本来ならビハインドや点差が開いた場面でのリリーフは、経験を積ませたい若手投手が担うべきなのかもしれない。ロングリリーフが難しい高年俸のベテランによって、その貴重な一席が埋まってしまうマイナス点もある。しかし、藤川の場合は「そういう場面でも黙々と投げている」ということ自体に大きな意味と影響力がある。極論、ブルペンにいること自体に意味がある。

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 好調・阪神を支えているのが安定感抜群のリリーフ陣なら、そのリリーフ陣を精神的に支えているのが実績抜群の藤川だ。そういう意味では、彼は今でも守護神なんだと思う。

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※「文春野球コラム ペナントレース2017」実施中。この企画は、12人の執筆者がひいきの球団を担当し、野球コラムで戦うペナントレースです。コラムがおもしろいと思ったらオリジナルサイトhttp://bunshun.jp/articles/3034でHITボタンを押してください。

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