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Soup Stock Tokyoが「エキナカ」で成功した理由

スマイルズ 遠山正道社長インタビュー #1

2017/06/26

「女性が白いご飯を堂々と食べられるのがありがたい」とよく言われた

――スープストックが駅にあることで女性がエキナカに滞留するようになり、エキナカのイメージを大きく変えたのではないかと思うのですが。

遠山 確かに、女性も気軽に入りやすい飲食店では駅に入っていったのはスープストックは早い方でしょうね。我々が駅に出店をはじめたのは、エキナカビジネスが本格化しはじめたばかりの頃で、スターバックスさんは2年後だったかな。今でこそ最初から飲食店が入ることを前提に設計・改装するようになりましたが、そもそもはツギハギ的にあそこが抜けたから次に何かを入れて、の繰り返し。その中で飲食店だとどうしても30坪は必要だったりするから難しい。その点、ウチは中途半端な小さいスペースを利用できて、それでいて単価も取れるという点でありがたがっていただけたのかなと。まさに小さいことはいいことだったわけです。

――今まで立ち食いそばみたいな店だけだったところに、おしゃれなスープストックができて、女性もやってくるようになった。

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遠山 0歳から100歳までと言っているけど、実際にスープストックのお客さんは8割ぐらいが女性なんです。で、よく言われたのは、女性が白いご飯を堂々と食べられるのがありがたい、と。特に夜ご飯ですよね。夜の8時くらいまで残業して、帰り際に駅のスープストックに立ち寄って夜ご飯。まるで映画のシーンみたいに、窓の外には行き交う人がバーっと流れていて、こっち側は止まっている。駅ならではのそういうところもいいのかもしれませんね。

©榎本麻美/文藝春秋

――スープストックなら食べているところを見られていても恥ずかしくはない。

遠山 そういうことなんでしょう。ランチならまだしも、夜に女性がひとりで牛丼屋とか、無理じゃないですか(笑)。そこに、駅にスープストックがあると。だから、うちは意外と夜のセールスもいいんです。平日のランチはもちろんですが、それだけでは正直ビジネスは成立しない。そこに夜、帰り際にふらっと寄ってくださるお客さまの存在はありがたい。これも駅のおかげ、ですね(笑)。

日本人は温かいもの好き

――小さいスペースでできて、サッと食べられるスープのお店が駅という流動性のある場所にマッチしていたということですね。

遠山 それに、ちょっと気がついたのは日本人は温かいものが大好きなんです。例えば、イギリスからサンドイッチ屋が入ってきましたが、うまくいかなくて撤退した。これっていろんな理由があると思うんですが、コールドケースにサンドイッチが並んでいるという「冷たい感じ」が受けなかったんじゃないかなと。サブウェイにしても、最初は冷たいままで出していたけれど、パンを焼いて温かいものを出すようにしたら伸びたという話を聞いたことがあります。そういう事例を見ても、日本人は温かいもの好きなんです。

――確かに、真夏に冷やし中華を食べようと思ってラーメン屋に行っても結局汗をかきながらラーメンを食べてる……なんてことは結構ありますね。

©スマイルズ

遠山 そうそう(笑)。だから、温かいものをしっかり食べていただける、その上で15坪くらいの小さいスペースでできる。それがスープストックの強みになったんじゃないかなと思うんです。

――でも夏は温かいものがそれほど受けない、ということはありませんか?

遠山 もちろん夏は冬と比べれば弱い。でも、実は一番売上が落ちるのは夏ではなくて春なんです。これまで寒かったのに急に暖かくなった、なんていう季節はどうも伸びないんですね。これから研究の余地がありそうなところです。

――出店にあたって路線の特徴などは考慮されてきたのですか?

遠山 路線ごとの傾向は間違いなくありますからね。うちでは東急さんの沿線がかなり相性がよくて。ただ、具体的には言えないですけど店を出してみたら全然うまくいかない路線もある。ひとくちに駅と言っても利用する人が限定的だと難しいとか、人数はどれくらいなのかとか。それとウチの客層がマッチするかしないかというところでお断りすることもありますね。

――現在約60店舗。さらに店を増やす計画はあるのですか?

遠山 あまり無理をして増やそうとは思っていません。相性のいいところにしっかりと出していきたい。それにウチの場合は駅ビルに入るというよりは改札の近くの人通りの多いところに出店することが多いので、そういう立地はかなり限られているんですよね。どこかに空きができたとしても、入りたいという店舗は多いですから賃料が釣り上がったりとか(笑)。だから店を増やすというのはあまり現実的ではないんです。ただ、ルミネ新宿に入っている店はスペースも広くてセールスもいい。そういう広めの店舗を作っていくことがこれからは出てくるかなと思っています。

©榎本麻美/文藝春秋
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