文春オンライン

強固な地盤の日本経済安倍首相よ経済の足を引っ張るな

追加緩和も公共事業も百害あって一利なし。数字に表れない日本の価値を直視せよ

2014/11/26
note

財政破綻はしない

 しかし、政府がこれ以上余計なことをせず、民間の経済動向を尊重するならば答えはノーでしょう。元々日本経済は強固な地盤を持っているからです。

 例えば財政破綻のリスクがある、と財務省自らが騒ぎ立て、消費税増税を強行した訳ですが、今の日本に本当に財政破綻のリスクがあるのでしょうか。

 実は日本が破綻すると言う話は初めてではありません。今回は財務省自らがマッチポンプとなっていますが、実は2002年はもっと切実で、日本は財政破綻すると騒ぎ立てられ、ジャパンプレミアムといって日本への資金の提供はまさに先日のギリシアのようにとんでもない利息を請求された時期があるのです。

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 格付け会社であるムーディーズ、S&Pなどの各社は日本の格付けを引き下げ、A2(S&P)という、アフリカにある日本のGDPの100分の1もないボツワナと同じ格付けまで実際に格下げしたのです。

 私もウォールストリートで働いていましたが、東京三菱銀行相手のわずか10億円の取引が本社の決裁が下りずにできなかった、などということが横行していました(もちろん日本の銀行には、預金は潤沢にありましたから、資金繰りに困ることはありませんでした)。

 それに対し、当時の財務省は公式に反論、世界中に向けて黒田財務官(そう、まさに今の日銀総裁です)がメッセージを送りました。

 その内容は……

 日本は世界最大の貯蓄超過国であり、国債はほとんどすべてが国内で低金利でかつ安定的に消化されている。また、日本は世界最大の経常黒字国であり、外貨準備も世界最高である。

 となっています。つまり、こんな国が倒産する訳がないだろうと財務省自ら反論した訳ですが、実はここに書かれている内容で変えねばならない点は一つもありません。日本は未だに世界最大の貯蓄超過国であり、国債の金利は10年債でも1%以下、約95%は国内で消化されています。経常黒字も引き続き世界最大、外貨準備は中国に抜かれましたが、この2002年当時の日本の外貨準備はせいぜい5000億ドル程度、現在の1兆5000億ドルの3分の1しかなかったのです。

 そこで大丈夫、と言っていたものが、なぜ今になって急に危ないと言うのでしょうか。全く理屈が通りません。企業と同じように政府は財政収支を黒字にするために存在する訳ではありません。継続可能な財政赤字を維持できる信用力がある限りにおいて、国家は運用可能であり、もし倒産することがあるとすればそれは日本国民が何らかの理由で一斉に金融資産(預金)を円から引き揚げてしまう、という事態だけです。今の時点でそれを想定するのは富士山噴火を想定するよりも可能性が低いものでこれは非現実的です。

 財政だけではありません。世界的に見て、これだけ安全が確保され、規律正しく、衛生的で、平均寿命が長い国などは日本しかありません。安倍首相の頭の中にはGDPしかないようですが、例えば安全性などをGDPに換算したらどのくらいのものになるのか、計り知れない価値があるのです。

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