文春オンライン

安倍首相の「長い言い訳」と安倍チルドレンの「暴言」を“丁寧に”検証する

失言だらけの1週間を振り返る

2017/06/24
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「ピンクモンスター」の暴言と暴行

豊田真由子 自民党・衆院議員
「このハゲーーーーーっ!」

 自民党の豊田真由子衆院議員が、政策秘書を務めていた男性に罵声を浴びせ続けた上、暴行を働いていたことがわかった。男性からの告発を受けた『週刊新潮』6月29日号が詳しく報じている。自民党現職国会議員によるこれほどまでの暴行・暴言は前代未聞だ。

「ピンクモンスター」 ©時事通信社

 豊田氏は2012年に安倍晋三総裁が率いて自民党が大勝した衆院選で埼玉4区から出馬し、初当選を果たした“安倍チルドレン”の一人。当選後は文部科学大臣政務官、東京オリンピック・パラリンピック大臣政務官を務めてきた。東大卒、厚生省にキャリア官僚として入省し、ハーバード大の大学院への留学経験もあるエリートだが、気性の荒さは永田町で有名だったと言われており、2014年にはすでに『週刊新潮』で当選1年半の間に秘書が20人以上辞めたと報じられている。現在に至るまでアルバイトも含め100人の秘書が豊田氏のもとから去ったという噂もある。ピンク色の服装が多かったことから「ピンクモンスター」という異名もあった(産経新聞 6月23日)。

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つねる、殴る、蹴る、ハンガーで叩く

 つねる、殴る、蹴る、ハンガーで叩くなど、暴行は3日間にわたって断続的に行われ、暴行の被害者の男性は「顔面打撲傷」「左背部打撲傷」「左上腕挫傷」を負い、通常国会会期末の6月18日付で秘書を退職した。豊田氏の罵声はICレコーダーで録音され、音声の一部がインターネット上で公開されている。実際に耳にした人たちからは「想像してた100倍酷かった」「(兵庫県の)号泣議員に匹敵するくらいのインパクト」「こんなどうしようもない代議士がいるなんて信じられない」などの非難が集中した(産経新聞WEB版 6月22日)。豊田氏の声が耳について離れない人も大勢いるので、興味本位で聞くのは要注意。

 豊田氏の暴言の内容は『週刊新潮』にて詳しく報じられている。冒頭の言葉はまだ序の口で、「うん、死ねば? 生きてる価値ないだろ、もうお前とか」「このキチガイが!!!」など人格を否定する言葉のほか、なぜかミュージカル風に政策秘書の男性を罵ることもあったという。挙句の果てには男性の娘を例にしてこのような話をしている。

自民党を離党はしたが、議員のまま ©志水隆/文藝春秋

「お前の娘がさ、通り魔に強姦されてさ、死んだと。いや犯すつもりはなかったんです、合意の上です、殺すつもりはなかったんですと。腹立たない?」
「(政策秘書の)娘が、顔がグシャグシャになって頭がグシャグシャ、脳味噌飛び出て、車に轢き殺されても…… ♪そんなつもりがなかったんですーーー で、済むと思ってんなら同じこと言い続けろ~~~~~」(後半部分はミュージカル調)

 ちょっと常軌を逸しているとしか思えない。豊田氏にも小学2年生の娘がいる。豊田氏の事務所は暴行などを大筋で認めているが、「『お前の娘が通り魔に強姦されて死んだらどうする』といったような発言はしておりません」と否定している。録音されてるのに! 結局、豊田氏は「党に迷惑をかけたくない」として22日の夕方に離党届を提出したが、議員はまだ続けるようだ。地元の有権者からは「地元として恥ずかしいので、離党だけではなく議員辞職してほしい」という声が上がっている(NHK NEWS WEB 6月22日)。

失言・トラブル続きの安倍チルドレン「魔の2回生」

 豊田氏と同じく、現在2期目の自民党の衆院議員は不祥事が相次いでおり、「魔の2回生」と呼ばれている。「重婚」および女性へのストーカー行為が発覚した中川俊直議員は経済産業大臣政務官を辞任し、自民党を離党。被災地視察で長靴を持参せず、水たまりをおんぶされて渡った上、パーティーで「長靴業界はもうかった」と発言した務台俊介議員は内閣府兼復興政務官を辞任。「がん患者は働かなくていいのではないか」と発言した“失言のデパート”大西英男議員は党の東京都連の副会長を辞任。未公開株の購入に関する金銭トラブルを起こした武藤貴也議員は離党。育休の取得を表明した直後に不倫が発覚した宮崎謙介議員は議員辞職している。

辞任会見での宮崎謙介元議員 ©杉山秀樹/文藝春秋

 なお、豊田議員の「この、ハゲーーーーーっ!」発言に対し、ハゲ差別の根絶を目指す“全国最大のハゲサークル”「早稲田大学増門会」が「全国で薄毛や抜け毛に悩む人たちの心証を無視しており、彼らが深い悲しみと憤りを憶えた」「ある種のヘイトスピーチだ」と抗議声明を出している(ハフィントン・ポスト 6月22日)。彼らの心中を慮ると、いたたまれない気持ちになる。