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“東大合格者”を増やした学校。その秘密は“交通網の発展”にあった

開成、灘、ラ・サール……“名門校”と“乗り物”の関係

2017/07/02
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渋幕の好実績のウラに“京葉線”?

 2017年、渋谷教育学園幕張高校(渋幕)からの東大合格者は78人を数えた。最近4年間で48人、56人、76人、78人と右肩上がりを示している。近い将来、100人の大台を超えてトップをうかがえるのではと、同校関係者は期待する。

 なぜ、東大合格者を増やせたのか。優秀な生徒が集まったからである。

 なぜ、優秀な生徒が集まったか。渋幕の教育内容、過去の難関大学合格実績が評価されたからであろう。

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 ここに、もう1つの理由をあげる進学塾関係者がいる。利便性、つまり渋幕への通いやすさだ。

 渋幕の最寄り駅は京葉線の海浜幕張駅である。2010年、外房線から京葉線に快速列車の乗り入れが拡充した。これによって外房線という千葉県の海沿い地域の勝浦や茂原から、海浜幕張駅に通いやすくなり、優秀な生徒が渋幕に集まったのではないだろうか。というのも、乗り入れの翌年、2011年に渋幕中学に入学した生徒の代で東大合格者が増えたのだ。彼らが卒業した2017年、東大合格者は増加した。

海浜幕張駅前 ©時事通信社

 もちろん勝浦、茂原という地域に東大受験生が集まっているとは考えにくい。だが、通いやすくなって、渋幕に優秀な生徒が集まっているのは確かだ。

不動の名門・開成も鉄道の恩恵を……?

 交通網の発展で利便性が高まり、東大合格者を増やしたというケースは、いくつかある。

 開成高校の例をあげてみよう。

 1969年12月、西日暮里駅が誕生した。営団地下鉄千代田線北千住、大手町間が部分開通したのだ。西日暮里駅には、開成高校がある。1971年、京浜東北線・山手線が同駅を開業、また北千住では千代田線と常磐線が相互乗り入れするようになった。つまり、こうした交通網の変化によって、埼玉県、千葉県、茨城県の優秀な生徒が開成に通いやすくなったのだ。それが数年後に証明される。

 西日暮里駅周辺の交通網が変化した71年開成中学入学組が東大を受験するのは、77年のことである。この年、開成の東大合格者は124人で初めて1位となった。さらに78年に千代田線は代々木上原まで延伸し、小田急線と相互乗り入れが始まり、神奈川県からも優秀な生徒を集められるようになった。開成が東大合格者数で今日まで盤石なのは、京浜東北線、千代田線のおかげといって過言ではない。2008年には舎人ライナーまでできてしまい、もはや敵なしだ。