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いつも自分は奇妙な二人組に興味があると気づいた。そこから生まれたおちゃめな双子の物語。──「作家と90分」青山七恵(前篇)

話題の作家に瀧井朝世さんがみっちりインタビュー

2017/07/01

genre : エンタメ, 読書

note

50分かけて小学校に通っていた頃1人で空想していたことが、今の自分につながっている

――青山さんは小さい頃から文章が得意だったのですか。

青山 全然得意じゃなかったです。だから、周りの人は私が作家になったことにびっくりしていると思います。

――でも、大学時代に書いたもので卒業後ほどなく文藝賞を受賞してデビューし、その2年後の『ひとり日和』(07年刊/のち河出文庫)で芥川賞を受賞。さらにその2年後、「かけら」(『かけら』所収、09年刊/のち新潮文庫)で川端康成文学賞を史上最年少で受賞されている。

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ひとり日和 (河出文庫)

青山 七恵(著)

河出書房新社
2010年3月5日 発売

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青山 なんだか遠い昔の話に思えます(笑)。

――勝手な思い込みなんですけれど、早くに重要な賞を獲られたことで、その書きたいものを書く自由度が高くなったんじゃないかなと思うんです。作家の方に話を聞いていると、編集者に言われたりして、賞狙いの作品を書き続ける人もいますから。

青山 私は大学出たてでまだ何も分かってない頃にデビューして、それでとにかく次を書かなきゃと焦っているうちに芥川賞を受賞して……。ただ賞をいただいたあとも、早く次を書かなくちゃ、という気持ちはぜんぜん変わりませんでした。今も昔もその時々で強く書きたいと思ったことを書くしかないんですが、一つ書いたらさあ次、と飽きもせずに常に次のことを考えているところは、懲りないなあというか、なんでこんなに変わらないんだろうと思います。

――いつから小説家になりたいと思ったんですか。

青山 ちょうど『おちゃめなふたご』を読んでいた頃だと思います。田舎なので小学校が子どもの足で50分くらいかかるところにあったんですが、同じ方向の友達もあまりいなかったのでひとりで考え事をして歩いている時間が長くて、その時にいろんな空想をしていました。魔法が使えたらどういうふうになるかとか、同じ家にクラスメイト4人と暮らさなきゃいけないと言われたら誰と誰を選ぶかとか、ドレスを作れるとしたらどういうデザインにするか、とか。そういうことばかり考えて、一人でにやにやしている子どもでした。その延長線上に、小説を書く、ということがあったと思います。

 なので本を書く人になりたいという気持ちは長らく漠然とあったんですけど、読書感想文も入選したことがないし、自分が作家になるのは無理だろうと思っていました。それでも中学生の時には生徒手帳に短いお話を書いたりはしていました。

――大学は図書館情報学を専攻されていますよね。司書になろうと思っていたのでしょうか。

青山 作家にはなれないだろうから、せめて本に近い仕事、外に出なくていい仕事をしようと思って、中学生の頃から図書館司書になることを目指していました。でもいざ大学に入ってみると、情報学とかコミュニケーション学の授業は面白かったのですが、分類だとかレファレンスだとか実務的な勉強にはあまり興味を感じられず、公務員試験のための勉強もやる気がしなくて、就職活動のときには司書になるという選択肢は消えていました。

青山七恵さん ©榎本麻美/文藝春秋

青山七恵(あおやま・ななえ)
1983年埼玉県生まれ。2005年、筑波大学図書館情報専門学群卒業。同年、大学在学中に書いた『窓の灯』で文藝賞受賞。2007年、23歳のときに『ひとり日和』で芥川龍之介賞受賞。2009年、『かけら』で川端康成文学賞を歴代最年少で受賞。著書に『快楽』『めぐり糸』『風』『繭』など。

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※「名無しの関係をたくさん見つけたい。関係採集家のようなものだと思います。───青山七恵(後篇)」に続く

いつも自分は奇妙な二人組に興味があると気づいた。そこから生まれたおちゃめな双子の物語。──「作家と90分」青山七恵(前篇)

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