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“赤ケバブ”vs“青ケバブ”! 六本木「ケバブ戦争」でついに逮捕者

逮捕者が出た通称「赤ケバブ」 ©共同通信社

 外国料理店がひしめく東京・六本木で、強引さで界隈に知られていた“客引き兄弟”が摘発された。6月21日、悪質な客引きをしていたとして、警視庁は風営法違反容疑で、中東のファストフード「ケバブ」店2店のトルコ国籍の従業員を逮捕した。

 警視庁担当記者が解説する。

「警視庁が逮捕したのは、ケバブ店従業員で兄弟のイシ・メメット容疑者(24)とイシ・ジョシィクン容疑者(20)。5月~6月の深夜、六本木の路上で『オー、大先輩』『ケバブ食ベヨ』などといって、通行人の男性の腕を掴んだりする強引な客引きをした疑いがあります。『親しみを込めたつもりで悪気はない』と供述していますが、悪意は明らかでしょう」

 兄弟の店がある六本木3丁目は、いま一部で「ケバブストリート」とも呼ばれ、50メートルの距離にケバブ店3店がひしめく激戦地。昼時だけでなく、酒の後の締めや、クラブに行く前の軽食などで利用され夜の客足も絶えない。兄弟の店は看板の色から「赤ケバブ」と呼ばれ、看板の青い「青ケバブ」との間で「ケバブ戦争」とも形容される壮絶な客の取り合いが続いていた。

「両店はただの商売敵ではありません。兄弟はトルコ国籍ながら、イラク、シリア、イランなどに数千万人いると言われ、トルコからも独立運動を展開する少数民族のクルド民族出身。100年前のオスマン帝国末期の頃から独立運動が続いていました。六本木のケバブ店は、このクルド系とトルコ系に分かれており、警視庁はこうした民族感情の対立も過剰な競争の背景にあるとみています」(同前)

 警視庁が適用したのは、本来キャバクラなどの風俗店を取り締まる風営法で、飲食店の客引きを同法で摘発するのは全国初。飲食店の客引きの摘発にはこれまで罰金刑が中心の迷惑防止条例が適用されてきたが、風営法は懲役最高6カ月と重い。

 捜査関係者が明かす。

「今回の店に関しては客引きをめぐる通行人とのトラブルなどの110番が2年間で27件も寄せられており、あまりの悪質さに動かざるを得なかった。ただ、今回の摘発が先例となり、風営法の規定による他の飲食店の客引き摘発に広がるかもしれない」

 ケバブストリートから思わぬ余波が及ぶ可能性がある。