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連載近田春夫の考えるヒット

近田 春夫
2017/07/05

タフなロックを貫いてきたB'zに、ひとつ提案したいこと――近田春夫の考えるヒット

『声明』(B'z)/『トニカクHEY』(Da-iCE)

絵=安斎肇

 B'zとは何なのか。それではいくらなんでもちょっといい方が漠然とし過ぎか。ここでは形態の話である。ふと考えてみれば元来B'zはギターの松本孝弘、ボーカルの稲葉浩志による、二人組のいわゆる“ユニット”だったのである。だけれど、一連の彼らの楽曲に於ける“音響感”は、まさしく典型的ギターロックバンドのそれといって良いだろう。思い浮かべてみるといい。ふりかえって、少なくとも過去の代表的大ヒット曲の大抵がそんなイメージだったのではないか。ちゃんと、ベースやドラムの人がメンバーにいるような、いかにもバンド然とした佇まいを醸し出していた。

 といった前振りから本題に入る前に、新作『声明』を聴いての感想である。レニー・クラビッツ調とでもいおうか、曲のアタマからリフでガンガン攻めてくる“ブルーズロック的”な手法――こういう感じは俺も昔ビールのCM用かなんかで作ったことがあるなぁ――は、今日の日本のロック音楽に於いては決して主流のスタイルではない。ちなみに“j好みなロック”といえばほとんどの場合で、甘口なメロディを感傷的な気分にさせてくれるような――予定調和な――コード進行のエレキギターに乗せた、大音響フォーク歌謡のことを指すようだ。

声明/B'z(Being)UCC缶コーヒーのCMソングとして書き下ろされた。焙煎・抽出の過程で本曲を聴かせて製造する特別企画も。

 おっと、読みようによっては悪意とも取れる書き方でしたかな? 失礼。いやわたくしのいわんとする本意はですなぁ、どこか繊細な、どちらかといえば女性的な印象の作品が中心かも……ってくらいのことだったんですが、ハイ。

 比べてB'zに常に思うのは、ギターにしろ歌唱――たとい内容が女性の心情を綴ったものだとて――にしろ、その音には何か“男性性”というか、フィジカルなタフさこそロックと他を分けるなによりのものであろう! といった表現哲学が、いい方を変えれば、一種暗さをも伴った重量感が――今回にしても――ありありと感じられて、そのような制作姿勢を我が国の音楽シーンにてよくぞ貫いてきてくれたものだと。俺はあらためてつくづく思ってしまうのだ(そこが私は好きだ)。

 では。遅ればせながら本題に入ろう。如何に、そのような意味合いにおいて優れてロックスピリット溢るる音楽を作り続けてきた存在といえる B'zではあるにせよ、冒頭にも述べた、エアバンドならぬ“エアメンバー”を擁した、あのサウンドにもいささか薹(とう)が立ってきたのかなと感じた。なのでひとつ原点にかえった的企画を考えました。

 アルバムでもいいしシングルリミックスでもいいけど、ドラムとベースを、名のある、例えばスライ&ロビー(ぐらいしか古い人間なんで咄嗟には思いつかないんでしゅ)とかの複数のチームに自由にやって貰う。勿論日本にもいっぱい素晴らしいベースとドラムはいるしね。そういう人達と、いわば“生リミックス”で1枚。どーですかね?

トニカクHEY/Da-iCE(Universal)4オクターブを誇る男子5人組ユニット。2014年にメジャーデビュー。本作で11枚目のシングル。

 Da-iCE。

 正直、あとひとつ本当に図抜けたものが欲しい! です。

今週の実用新案登録「上の記事に書いたB'zのアイディアの話だけどさ。おそらく誰も言ってなかったと思うんだよ。いま音楽業界は頭打ちな状況で、いままでにない発想が求められているし、お客さんもそういった試みにお金を払いたいんじゃないかな」と音楽プロデューサー近田春夫氏。「なので、オレに言ってくれれば、良いようにやってあげるからね(ハート)」