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新浪剛史の教え#3「ITだけでは仕事は動かない」

私はこう考える――新浪流・乱世を生き残るための教科書

2017/07/20

 三菱商事、ソデックス、ローソン、サントリー……。私は社会人になってからこれまで、商社、外食、小売り、製造業と、さまざまな場所で仕事をしてきました。私がそこで何を考え、なぜ挑戦し続けることができたのか。現在までのキャリアの中から、本当に役立つエッセンスをこれからお話ししたいと思います。

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モノ消費からコト消費へのシフト

 大量消費社会が到来して以来、モノの価値が下がり続けています。均等に同じようなものを大量につくって、非常にコストは安くなる一方で、差別化できるものが少なくなっています。その結果、消費者はどんどんモノを受け付けなくなっているのです。

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 私は、モノ消費からコト消費へと進んでいる要因の一つは、消費というシーンで差別化が進んでいるからではないかと考えています。実際、これだけ消費動向が厳しい中で、そうしたことを理解し、実践している会社は非常に業績がいいわけです。

 例えば、いいレストランというものは、多くのリピーターを持っています。それは、そのレストランに行ったとき、食べ物がおいしい以上に、非常に楽しい体験ができるからです。レストランという場で、トータルで得られる何かがコト消費につながっているのです。

 食べ物がおいしいと感じるだけではなくて、全体で感じたこと、その満足度こそが、消費者を惹きつけるのです。

2017年度サントリー入社式にて