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武田砂鉄×ジェーン・スー#4「EXILEの“正しさ”にかつてのコンプレックスが再燃」

『コンプレックス文化論』発売記念対談

2017/07/16

(3)より続く 

 天然パーマから遅刻癖まで、表立ってコンプレックスの対象とされなかったものに着目した評論集『コンプレックス文化論』が発売されました。刊行を記念して、著者の武田砂鉄さんと、ジェーン・スーさんがコンプレックスについて語り合う対談の第4回。前回、武田さんの3大コンプレックスが明らかになりましたが、話題はさらにTDLやEXILEに発展します。

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『コンプレックス文化論』(武田砂鉄 著)

武田 スーさんは、ディズニーランドが苦手なんですよね。なぜ、アメリカンなものが好きなのに……って思ってしまいます。

スー ディズニーというより、あそこに入り込んでくるヤンキーテイストですよね。ヤンキーって多数派の成功者だから、仲間とか愛とかに対しての衒いもないし、さっき言っていた、砂鉄さんや私が飛び越えられない低いハードルっていうのをどんどんなぎ倒して前に進んでいける人たちだから。まるっとあの世界を信じるのはなかなか厳しい。

武田 日頃、原稿に行き詰まると、うっかりEXILEのことを書いちゃう癖がある(笑)。あの方たちって、全ての所作が正しいじゃないですか。言ってることもやってることも正しい。「正しさ」が横一列になって、威嚇しながらこちらに向かってくる感じに、「そうだよ、この感じだよ」ってかつてのコンプレックスが再燃する。

©文藝春秋

スー 私は、EXILEが出てきたら「おっ、EXILE!」って言うだけですよ。

武田 「よっ! EXILE」

スー 「よっ!」もダメです。

武田 把握で済ませると。

スー 確認だけです。

武田 身体が完璧で、相応の精神が補完されている個体を見ると、かつての控えコンプレックスが発動します。だからこそ、彼等の、文化領域への介入というか制圧についてはとても敏感になっています。もう、何でもやろうとするの、やめてくれよって。

 その一方で、今、全方位的な覇者である星野源に対して、悪い感情を抱かないのは、前の議論で言うと、Bにいた感じがするからなんですよね。この人、Aじゃなかったなって。A出身者だと、「お前、なんでシモネタまで取り扱おうとしているんだ!」って怒るんだけど。

スー Bの出世頭ってことに嫉妬はないんですか?

武田 嫉妬と希望の星という気持ちの両方が……。

スー ないまぜ(笑)。俺たちのところから、出ていって。

武田 それを偉そうに精査している現在(笑)。Bの自分が尊敬していた人たちが「星野くん、いいじゃん」みたいな言及を重ねているのを見ると、「これはもう認めざるを得ないぞ」と偉そうに判定する。じゃないと、こっちの立場がなくなる。