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小島秀夫が観た『ラ・ラ・ランド』

ラ・ラ・ランドはハリウッドの夢を見るのか?

2017/07/23

genre : エンタメ, 映画

note

鮮やかな色彩の“消滅”が意味する“代償”

 夢の国で若い男女が出会い、恋に落ちる。ジャズ・ピアニストを目指す男、セブ(ライアン・ゴズリング)と、女優志望のウェイトレス、ミア(エマ・ストーン)は、夢の国でそれぞれの夢を追いかける。

 私たちの誰もが一度は経験したことがあるだろう、恋と夢を追いかけるあの切なくて甘い感情が胸に蘇ってくる。

© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.

 恋は始まった時が最も甘美で、夢は夢見ている時が最も幸せだ。しかし、恋も夢も前に進めなければ成就しない。そのためにも、二人には時間が流れる。夢でまどろんでいるのではなく、二人は夢を実現するために前に進む。

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 ここは夢の国のLAだが、劇中では、はっきりと四季が示される。

 夢の国にも時間は流れる。LAにもAnother Dayが訪れるのだ。

 二人の仲は深まり、もつれていく。一方で、それぞれの夢に近づいていく。しかしそれにつれて、冒頭から映画を飾っていた鮮やかな色彩は消えていく。

 夢が実現すると、夢の国は現実のLAに近づいていくのだ。

 夢を実現するためには、何かを捨てなければならない。スクリーンから消えた鮮やかな色彩は、そのことを意味しているのだろう。では、そのあとに残されたのは、無味乾燥な、ただの現実なのだろうか? 私はそうは思わない。この映画にも、そうではないというメッセージが込められている。

© 2017 Summit Entertainment, LLC. All Rights Reserved. Photo credit: EW0001: Sebastian (Ryan Gosling) and Mia (Emma Stone) in LA LA LAND.Photo courtesy of Lionsgate.