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名越 健郎
2017/07/19

トランプ対プーチン初の首脳会談 プーチン圧勝の舞台裏

初対決の軍配はプーチンに ©共同通信社

 7日、ドイツのハンブルクでトランプ米大統領とプーチン・ロシア大統領の注目の初会談が行われた。

 予定の30分を大幅にオーバーした2時間15分の会談は、シリア南西部の停戦や安全地帯の設置で合意。ロシア側はシリアでの軍事行動を事実上、米側に容認させた。

 一方のトランプ大統領は、昨年の米大統領選にロシアがハッキングなどで介入したとされる「ロシアゲート」疑惑について、「何度も」(ティラーソン米国務長官)懸念を表明したという。だが、プーチン大統領は全面否定でかわし、サイバー安全保障で作業部会を設置することで合意。

 密室会談の全貌は公表されていないが、トランプ大統領はウクライナ領クリミアの併合問題やシリア・アサド政権の化学兵器使用疑惑も提起しなかった模様だ。

 プーチン大統領は会談後、「本当のトランプ氏は、テレビで見るのと全く違う」「彼は相手の発言をすぐに理解する。問題に精通した強力な交渉者だ」とトランプ大統領を“ほめ殺し”にし、首脳間の信頼醸成を進めれば、関係改善を達成できると強調した。

 ロシアのメディアは、「これで米露関係の後退が止まる」などと手放しで歓迎。

 英BBC放送も、「ロシアはシリアやサイバー安保での小さな合意を今後、欧米の対露制裁解除という大目標につなげようとするだろう」と分析した。

 米紙ニューヨーク・タイムズは、「歴代米政権は、ソ連・ロシアの人権問題や政治的自由抑圧を提起してきたが、トランプ政権はこの伝統を放棄し、ロシアとの戦略的、経済的利害を重視した。プーチンの大勝利だったことは疑いない」と書いた。

 プーチン大統領は、ロシアゲート疑惑の形ばかりの“譲歩”で、米国と対等のパートナーであることを世界に誇示する“成果”を引き出した。

 過去三代の米大統領と対峙してきた老獪なベテランのプーチン大統領にとって、準備不足のトランプ大統領は御しやすい相手だったようだ。

 とはいえ、米上院は6月、対露追加制裁法案を98対2の大差で可決し、超党派での反露感情の強さを示した。トランプ大統領を籠絡しても、制裁解除の道は険しい。

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