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【イースタン・ヤクルト】戸田球場に響き渡るブルペン捕手・小山田貴雄の声

文春野球フレッシュオールスター2017

2017/07/13
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※こちらは公募企画「文春野球フレッシュオールスター2017」に届いた約100本の原稿のなかから出場権を獲得したコラムです。おもしろいと思ったら文末のHITボタンを押してください。

【出場者プロフィール】HISATO(ひさと) 東京ヤクルトスワローズ KK歳
 KK世代の野球女子。野球ファンを40年、ヤクルトファンを四半世紀。戸田と神宮中心に、バイクで行けるところに出没する。好物は「高速スライダー」、合言葉は「ノー鵜久森、ノーライフ」、座右の銘は「言い訳は進歩の最大の敵である」(パクリ)。記憶力は皆無だが、選手の顔と名前と背番号はよく覚える。ほぼ毎週戸田に行って写真を撮るが、カメラ女子よりメカ音痴寄り。バイクなので神宮でも飲まないが、野球があればいつでも酔える。

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戸田球場の魅力

 空。風。ヒバリの声。緑溢れるヤクルト二軍の戸田球場。そこに通うようになったきっかけは、一軍選手がリハビリしていたから。でも、すぐに魅力にハマってしまった。至近距離の練習。プロの球。そして「人」に。

「OK! いい球だぁ!」

 一際大きな声がする。ブルペン捕手・小山田貴雄。戸田のムードメーカーで人気者。その存在感は圧倒的だ。190cm 95kg(公称)。一度宮出コーチと並んでいるのを見たが、あの宮出が華奢に見えた。「ガンダムみたい」とは友人の名言だが、白ユニに青赤の防具を着けた姿を見上げると頷ける。

 声もでかい。ブルペンではとびきりでかい声で投手を呼び、気合を入れる。ラップを歌って現れたり、物真似をしたり、変なあだ名で呼んだり、底抜けに明るいキャラが魅力の人だ。

2008年に育成選手として入団した小山田貴雄 ©時事通信社

 二十数年前から戸田に行ってはいたが、練習まで見たのは昨年3月が初めてだった。戸田球場にはブルペンシートがあり、練習時も入れる。初めて、目の前で生の投球を見て衝撃を受けた。

 プロの球って本当に唸るんだ。ミットの音がバン! と響く。その音に文字通り震えた。そして夢中で何十球と見るうちに、気付いた。

「ナイスボールだ!」「うーんもうちょい」。ブルペン捕手のミットの音、掛ける声を聞けば投手の調子がすぐ分かる。球数をカウントし、良い球悪い球をはっきりさせ、癖を指摘する、彼ら。申し訳ないが、それまでブルペン捕手といえば「壁」で、練習相手だと思っていた。現役の捕手に敵わない存在だと思っていた。

 いや、むしろ二軍の若手捕手には到底出来ないことをやっている。コーチの意思を受け、投手を導く重要な役割なのだ。

 以来、見方ががらりと変わった。生の球を見る。音を聞く。ブルペン捕手の言葉に感心する。笑う。戸田くらいそれが目の前で堪能できる所は他にない。試合の時も、次に誰が何回投げるのか、いつ肩を作るのか、ブルペンを通して見るのが楽しくなる。ブルペン捕手の目の前が定席になった。

戸田球場のムードメーカー ©HISATO
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