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鼠入 昌史
2017/07/17

天理駅前に「白い古墳」が続々と出現した理由 2人のキーマンが語る

新しい「駅前リニューアル」のかたち

JR、近鉄、天理市、天理教……全方面の「調整」をしたのは

 こうした取り組みを進めることができたのには、市長の政治的決断も大きいと吉本さん・佐藤さんは口をそろえる。

「そもそも駅前は機能面でも法律面でも人が溜まるような想定がされていないんです。さらにあの土地は所有者が複数に分かれているので、なにかやろうとすれば全方面の調整が必要になるんです。もちろん国交省や地元の商店街との調整もある。それをすべて市長が先頭に立って進めてくれた。ある意味思い切った駅前広場が作れたのは、市長の力あってこそですね」(佐藤さん)

駅前のカフェも人気 ©鼠入昌史

 かくして“ただの広場”だった頃とは比較にならないほど賑やかな駅前が生まれた天理駅。JR天理駅のホームからも子どもたちの声が聞こえ、トランポリンで跳ね続ける子どもの姿も見える。だが、吉本さんは「これがゴールではなく、むしろスタート」と語気を強める。

「駅前の整備は出発点に過ぎません。ゆくゆくは市全体の活性化、そして人口増加につなげていかなければ。そのためにも、せっかくCoFuFunにたくさんの世代の人が集まるようになったので、世代間交流が生まれたらいいなと。また、新興住宅地と歴史の古い市中心部との間の交流も生まれて、より多くの人が『天理って良いところだな』と町の魅力を知ってもらうきっかけになるよう、これからも頑張っていかなければなりません」

レンタサイクルも充実 ©鼠入昌史

デザイナーの仕事は、作って終わりではない

 駅前広場のデザインは終わったが、佐藤さんの仕事は終わらない。

「例えば駅の裏側をどうするのか。そのバランスも取っていけたら良いし、手直ししていかないといけないところもある。スポーツが盛んな町で世界中から遠征に来る人もいるのに宿泊施設が充分でないなど、すべての課題が解決されたわけではありません。駅前の再整備はあくまでもきっかけ。私たちデザイナーの仕事は作って終わりではなくて、どういう風に使われていくのか、ソフトの部分にもコミットしていかなければならないと思っています」

©平松市聖/文藝春秋

 ともあれ、今までの“地方都市の駅前広場”とは一線を画した天理駅前のCoFuFunの賑わいは、地方の活性化のひとつのヒントになることは間違いないだろう。佐藤氏は「どの町にも必ずオリジナルの魅力やコンテンツがある」と力を込める。

「日本全国どこに行っても同じような駅前広場がある。それってなんだか不気味ですよね。だから、ひとつひとつの駅や町にあわせたローカライズが必要なんだと思います。天理駅前広場は順調に機能してきていますが、これを他の駅にコピペすればよいかというと、そうではないでしょう。その上で、デザイナーはそれぞれの町の魅力をどう直感的に分かりやすく表現し、落とし込んで伝えていくか。手間はかかりますけど、そうすることが地域活性化の第一歩になるのではないでしょうか」

人口減少時代、“駅前”という公共スペースをいかに活かすか

 少なくとも、今の天理駅に降り立って「この町は寂れているんだな」と去っていく人はいないだろう。むしろ、興味を持ってCoFuFunに立ち寄り、カフェで一休み、場合によっては地元の人との交流を楽しむこともあるかもしれない。そして、駅に人が集まれば鉄道の利用者増にも繋がる可能性がある。人口減少時代、“駅前”という公共スペースをいかに活かすのか。天理駅前の“古墳”で遊ぶ子どもたちの声が、そのヒントを教えてくれている。

©平松市聖/文藝春秋
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