昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

大井 智保子
2017/07/18

【広島】「甲子園の悲劇」があったからこそ「七夕の奇跡」は起こった

文春野球コラム ペナントレース2017

忘れられない「甲子園の悲劇」

 2017年7月7日「七夕の奇跡」がおこった。でも、戦っている選手達はこう言うかもしれない、奇跡ではない、日々の努力の積み重ねだと。

 たしかにそうかもしれない。あの日から変わった、そうあの日。5月6日甲子園球場での阪神戦だ。キャンプから絶大に期待され、4月から着々と勝ち星を重ねていた岡田明丈が先発登板の試合で、まさか1イニングに一挙に7点を失うなんて、そしてその後9点差をひっくり返されることになるなんて、誰が予想できただろうか。まだ前半戦が終わったばかりだが、あの日の絶望たるや、「2017年のワーストゲーム」だと言い切る自信がある。しかし、「甲子園の悲劇」があったからこそ「七夕の奇跡」は起こったのではないだろうか。

 カープはあの日からというもの、4点差、5点差といくらリードがあろうとも、決して手を抜かなくなったように感じる。手を抜くという表現は少し違うかもしれないが、どんなに差があろうとも、決して気持ちを緩めることが無く最後の最後まで攻め続けるのだ。点はいくらあってもいい、1点でも多く追加点をとろうという姿勢が随所に見えるようになった。先頭打者が塁に出たら、すかさずバントで塁を進める。カットで粘り四球を選ぶ、隙あらば走りさらなる一点を求める。これらのプレーは当たり前のことではあるが、大量得点で勝っている時はしなくなりがちなのが現実のところだが、違うのだ。

「9点でも足りなかった」記憶は我々ファンの心にもどっしりと居座っている。いくら点差があろうとも、「9点をひっくり返されたあの日を忘れるな」を口癖に、7・8・9回と、勝ち継投投手への応援にも手を抜かなくなった。リリーフ・クローザーの一球一球に集中し、黄光が増えるごとに拍手がおこり、緑光が増えるとエールの拍手が内野席から自然と広がる光景が当たり前となった。

 それと同時に、逆の意識も生まれた。9点差があっても負けることがあるのだから、勝つことだってできるはずだと。最後まで諦めない堅実な姿勢で、今年のカープは数々の逆転勝利を生んできた、その数なんと27勝分。

はてなブックマークに追加