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恩田陸×仲道郁代スペシャル対談 「蜜蜂と遠雷」を聴いて楽しむ

このCDができたことで物語の世界が完成した

恩田 この小説は、都合七年間に渡って雑誌に連載したものを大幅に加筆し、一冊にしたのですが、毎回ほんとに大変で、曲を何回も聴いてピアニストの心境や、コンクール会場の雰囲気を想像しながら書いていました。

仲道 聴きながら書けますか?

恩田 それが駄目で、あらかじめ聴き込んで書いていました。一次、二次と物語が進んで、三次審査ぐらいになると、一曲がどんどん長くなるじゃないですか、だから三次審査を書いている時は、もう辛くて、辛くて。

仲道 ハハハハ。ほんとですね。

恩田 二十分、三十分の曲、これどうやって書けばいいんだ、と毎回が試行錯誤の連続でした。

仲道 恩田さんにとっては、どの曲も繰り返し聴いて、すでにお馴染みでしょうが、あらためてこうして小説のストーリーに沿った曲の並びで聴いて、どんな感じがしましたか。

恩田 いや、もう単純にすごい嬉しかったですね。小説はとっくに書き終わっていましたが、このCDを手にして、これでようやく物語が完成したんじゃないか! と思ったぐらいです。

仲道 読者の方も同じ気持ちかもしれませんよ。

音楽を言葉に、言葉を音楽に。それぞれの難しさを知るおふたりは、すぐに旧知のように打ち解けた

恩田 ところで小説では、ピアニスト各人の音楽的な歩みや心境などを書きましたが、実際に世界のピアニストや、生徒さんを見てこられた仲道さんが、興味を持った登場人物がいれば、ぜひお聞きしたいのですが。

仲道 共感という意味で、やっぱり栄伝亜夜さんですかね。

恩田 ほー、どうしてですか?

仲道 彼女には葛藤があるんです。自分は何のために弾くのか、常に自問自答しながら成長している、そこにすごく共感します。

恩田 亜夜のメンデルスゾーン、仲道さんに弾いていただいて、ほんとによかったです。

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