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長谷川 晶一
2017/07/19

【ヤクルト】緊急助っ人参戦。代打・尾崎世界観!

文春野球コラム ペナントレース2017

巨人・プロ野球死亡遊戯との差はダブルスコアに

 オールスターゲームも無事に終了し、いよいよ後半戦が始まった。愛するヤクルトは前半戦だけで2度の10連敗を喫する泥沼状態にある。これは、あの伝説の高橋ユニオンズ以来、実に61年ぶりの悲しい記録だそうだ。僕は数年前、『最弱球団 高橋ユニオンズ青春記』(彩図社文庫)という本を出版した。1954(昭和29)年から56年まで存在した幻の球団の3年間にわたる興亡を描いたドキュメンタリーだ。

 この本の取材中、続出するトホホなエピソードの数々を見聞きするにつけ、「当時のユニオンズファンはかわいそうだなぁ」と呑気に考えていたのだが、まさか、自分が当時のユニオンズファンと同じ悲しみと苦しみを経験することになるとは思わなかった。

 一方、我が文春野球もまた、フレッシュオールスターが盛況のうちに終了し、ペナントレース後半戦が始まった。セ・リーグは巨人・プロ野球死亡遊戯の独走状態が続いている。前人未到の33000HIT超。19日現在、3位ではあるものの、16000HIT超で、まさにダブルスコア状態。このままでは、文春野球の灯が消えてしまう……。何とかして、打開策を講じなければなるまい。妙案を探し求めていたところ、朗報が届いた。

 7月16日にリリースされた「コミッショナーだより・フレッシュオールスター特別号」において、村瀬コミッショナーは後半戦から導入される「新ルール」を発表したのだ。

代打制度の導入

 各球団のコラムニストが指名した人物を「代打」として代わりにコラムを書いてもらうことができます。代打が使えるのは月に3回まで。もちろん一度も代打を使わず自力だけでやり抜いても結構です。HIT数は同じようにチームに還元されます。

 何と、まさかの「代打制度」の導入。自力のみで巨人・プロ野球死亡遊戯に勝てそうもないのならば、ここは代打を使うまでだ。僕はさっそく行動に移した。

僕と尾崎世界観とヤクルトと

 ヤクルトが7度目のリーグ制覇を果たした2015年秋に、話はさかのぼる。ヤクルトの優勝を報じる『週刊ベースボール』の優勝記念号に、僕は「特別エッセイ」を書かせてもらった。この号で、僕の隣のページでコラムを書いていたのが尾崎世界観氏だった。恥ずかしながら、このとき僕は彼のことをまったく知らなかった。ただ、そこに書かれていた文章には非常に共感を覚えた。

 15年シーズンのある試合における久古健太郎の粘り強いピッチングについて、実によく試合を見ているのが伝わってくる描写があった。この一文に好感を持った僕は、改めて彼のプロフィールを確認する。こうして、「クリープハイプ」という人気バンドのメンバーであることを、このとき初めて知った。

 それから2年が経過した今年。僕は長年のヤクルト愛を綴った、『いつも、気づけば神宮に 東京ヤクルトスワローズ「9つの系譜」』(集英社)という極私的スワローズ史を出版する。すると、尾崎世界観氏サイドから「対談をしたい」と申し込みがあったのだ。その模様は、現在発売中の『BARFOUT!』(ブラウンズブックス/幻冬舎)に掲載されているので、ご興味のある方は、ぜひ確認してほしい。

尾崎世界観とのツーショット ©長谷川晶一

 初めて対面した尾崎氏は、ミュージシャンらしい繊細さを隠そうともせずに、それでも情熱的にヤクルトの魅力を語り続けた。僕もヤクルトへの思いの丈を披露し、すごく楽しい時間を過ごすことができた。心から、「もっとゆっくり彼とは話をしたいな」と思いつつ、僕はそのまま神宮球場へ向かったのだった。

 そして、それから数日後、神宮で試合を見ていると、尾崎さんから、LINEで「今、神宮にいるんですけど、もし神宮にいらしたら、試合後、一杯どうですか?」とメッセージが入った。たまたま、予定も空いていたので、すぐに快諾。試合後、神宮球場近くの居酒屋で酒を酌み交わすこととなった。

 酒宴は、その日の敗因分析から始まった。そして、「ヤクルトはDV男性のようだ」という話題で盛り上がった。散々、つらい目に遭わせておきながら、ふとした弾みにとてつもない劇的な勝利を届けてくれる。その結果、ズルズルとまたつき合いを続けてしまう。そんなバカ話をしながら、お互いに何杯も、何杯も酒を飲んだ。試合は敗れたけれど、その日は実に幸せな一日だった。