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横田 増生
2017/07/21

佐川急便の残業代未払い問題 宅配危機解決の唯一の方策とは?

いち早くアマゾンから撤退したが… 撮影:横田増生

  筆者が「週刊文春」7月20日号で報じた佐川急便の残業代未払い問題。発売日以降、各メディアも相次いで報じ、宅配業界に激震が走った。

 未払い残業を巡っては、宅配業界1位のヤマト運輸を抱えるヤマトホールディングスが前期約190億円を支払っている。さらに、今期の第1四半期は人件費増で赤字に陥る見通しだ。業界2位の佐川の支払額は明らかになっていないが、経営のマイナス要因となるのは不可避だ。中堅物流企業の首脳はこう話す。

「ツートップでさえ、未払い残業代があるということは、中小は推して知るべし。ヤマトの事件以降、人件費そして運賃は上昇傾向にあるが、佐川でも表面化したことで、その流れが加速するだろう」

 宅配を含む物流業界は、売上高の約半分の比率を占めるのが人件費という労働集約産業であり、車両50台以下の中小業者が全体の9割以上を占めるという特徴がある。

 数万人のドライバーを抱え、資本力でも圧倒的に有利なヤマトや佐川でさえ、今後、法定通りに人件費を払うと経営が傾きかねないが、中小はさらに厳しい経営環境にある。そこに、ヤマトが今年度中の従業員1万人増を打ち出し、人件費の上昇圧力は高まっている。

 現場では、既にドライバーの取り合いが起こっている。

 首都圏の佐川社員は、「昨年1年間で、ヤマトに5人のドライバーを引き抜かれた」と言い、逆に別の社員は、「ヤマトや日本郵便から5人ほど引き抜いた」と言う。

 ヤマトが当日配送から撤退し遅延が発生したアマゾン。その中小の下請け業者「デリバリープロバイダ」の間でも、

「遅配が起こる7月以前、アマゾンの東京都北区を担当している業者の下請けドライバー30人のうち半分が、隣の区を担当している別の業者に車両ごと引き抜かれた」(業界関係者)

 人手が集まらないのは、長時間労働である上、低賃金であることがその理由だ。人材確保の原資となるのが運賃収入である。今後、経営の最重要課題は、十分な人件費を払えるだけの運賃を荷主から受け取れるのかどうかになる。業界にとって長年の悲願であった“適正運賃の収受”こそが、今の時代を生き残る唯一の方法なのである。

文春オンラインでは、ジャーナリストの横田増生氏とともに、継続して日本の物流の「いま」、日本企業の「働き方改革」を取材します。読者の皆様からの情報をお待ちしております。

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