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連載すごいアート

林 綾野
2017/07/21

不気味でグロテスク、でも間近で凝視してしまう『アルチンボルド展』――すごいアート

 誰の肖像だろう? そう思って絵に近づけばきっと誰もがぎょっとする。横顔に見えたのはなんと全て野菜と果物なのだ。つぶらな目はチェリー、鼻はキュウリで口元にはインゲン豆の歯がキラリ。アルチンボルドの「夏」は果蔬(かそ)で表された寓意的な肖像画だ。

 16世紀、ハプスブルク家の宮廷で活躍したこの画家は、自然科学通のマクシミリアン二世、芸術愛好家のルドルフ二世といった皇帝に寵愛された。

「夏」は永遠に巡る季節に宮廷の繁栄を重ねた連作「四季」のひとつで、あらゆる野菜や果物を集め描き、万物を掌握する皇帝の力を暗喩する。

 展覧会には無数の花、無数の魚などで描かれる横顔など、貴重なこの画家の絵がずらりと並ぶ。卓越した描写力と他にない突飛な発想が故に皇帝に愛されたその絵は、今もなお魔術的な魅力を放つ。不気味でグロテスクだけれど、どうしても見たくなってしまう、そんな絵なのだ。

INFORMATION

『アルチンボルド展』
~9月24日 国立西洋美術館 月休 03-5777-8600(ハローダイヤル)
http://arcimboldo2017.jp/

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