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「ベーシックインカム」「週15時間労働」「国境の開放」で、“新しいユートピア”を目指せ

「ベーシックインカム」「週15時間労働」「国境の開放」で、“新しいユートピア”を目指せ

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「仕事」という概念を再定義しよう

 仕事とは何かということについて、私たちはゼロから考え直さなくてはなりません。エコノミストが言う生産性の高い仕事とは、できるだけ多くのお金を稼げる仕事です。でも、給料が安くても大学や研究機関で技術開発をする人々は、世の中に大きなリターンをもたらします。また、子供や老親の面倒をみることは、たとえ賃金が支払われなかったとしても重要な仕事です。

 

 もしすべての人にベーシックインカムが保証されれば、給料はそれほどもらえない、あるいはまったくもらえないけれど大事な仕事に、人々が就きやすくなるかもしれません。最低限の収入保証があることで、新しい場所で新しい仕事にチャレンジすることが今より気軽にできるようになれば、経済のダイナミズムも高まるはずです。

ユーゴーが説いた「どんな軍隊よりも強いもの」とは?

 私がベーシックインカムの研究を始めた2013年頃は、ほぼ誰もその概念を知りませんでした。しかし今日、そのアイデアは世界中に急速に広まりつつあります。『隷属なき道』は20以上の言語に翻訳され、フィンランドやカナダではベーシックインカムの実験が始まっています。シリコンバレーでもたくさんの人々が、このアイデアに興味を持っています。

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 最後に、ビクトル・ユーゴーの言葉を紹介しておきましょう。「どんな軍隊より強いものは、時宜を得たアイデアである」。私は今それが、ベーシックインカムであると信じています。