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【阪神】今の阪神には新庄剛志が足りない――亀新コンビ12年ぶりの再会に思う

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/07/21
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 去る7月16日(日)、大阪のMBSテレビで『With Tigersスペシャル 強い虎を追っかけタイガース』という2時間特番が放送された。目玉企画のひとつは、あの新庄剛志のVTR出演。同じく阪神OBの亀山つとむが、新庄と12年ぶりの再会を果たすという。

 亀山と新庄といえば、やはり1992年の鮮烈な活躍が思い出される。前年まで5年連続Bクラス(うち最下位4回)に沈んでいた暗黒時代の阪神が、彼らを中心とする若虎たちの活躍によって、2位に躍進した年。あの年、それまで無名の若手だった亀山&新庄の“亀新コンビ”は攻守で溌剌としたプレーを見せ、絶大な人気を誇ったものだ。

新庄剛志と亀山つとむ ©文藝春秋

幻滅していたはずの新庄の姿を、頬をゆるませながら眺める心理

 そんな亀新コンビ、とりわけ新庄についてだが、実を言うと最近の私は彼に少々幻滅していたのだ。以前は新庄特有の型破りな言動や、みるみる黒光りする怪しい風貌、また引退後は球界と距離を置いた奔放な生活を謳歌するところなども、それもまた宇宙人・新庄らしさだと思って寛容に受け止めていたのだが、それを何年間も見せ続けられると一種のマンネリズムや、野球界から遠ざかっていく寂しさを感じてしまう。

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 あの新庄も早いもので引退して十年以上が経過した。現在45歳、もう若くはない。彼の強烈な個性は若かったがゆえに輝きを放っていたのであって、その若さを失って以降も相変わらずの調子でいるなら、それは途端に痛々しさを帯びてくる。

引退して十年以上が経過した新庄剛志 ©文藝春秋

 私としてはそんなマイナス感情を抱き始めた矢先の同番組だった。だから、今さら亀新コンビの再会と煽られても……なんて冷めた気持ちになるのかと思いきや、現実はそうではなかった。最近の新庄には幻滅していたはずなのに、いざ彼が一般のバラエティ番組ではなく阪神特番に出演すると聞くと、一気に胸が高鳴った。あの新庄が野球について、とりわけ阪神について言及する。それを想像しただけで、単純に興味がわいたのだ。

 実際に同番組を見ると、新庄の住むバリ島で亀新コンビが再会の抱擁を交わし、その後は「亀山×新庄」の対談を軸に進んだ。その中で新庄の口から久しぶりに出た野球の話というのは、1995年の引退騒動であったり、外野守備やグラブへのこだわりであったり、まあ、とりたてて目新しいものはなく、過去に一度は聞いたり読んだりしたことのあるネタばかりだった。あとは、阪神を優勝させる秘策はファンの声援だとか、そういう類のバラエティ向けサービストーク。深いものは特になかった。

 しかし、それでも私は無性にうれしかった。刮目することはなかったけど、ずっと頬をゆるませながら映像を眺めていた。あの新庄が阪神のことを語っているだけで、やけに胸が熱くなった。引退後、あえてなのかなんなのか、とにかく野球に(特に阪神に)触れることが少なかった新庄が縦縞のユニホームを着て、かつての盟友・亀山つとむと約20年ぶりにキャッチボールをするシーンもあった。新庄はいつもの口調で「マジ、超うれしかった」と言った。本当に楽しそうだった。

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