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喋る・寝る・本を読む……哲学者は常に“動いている”――哲学者・千葉雅也インタビュー #2

喋る・寝る・本を読む……哲学者は常に“動いている”――哲学者・千葉雅也インタビュー #2

「勉強する」哲学者が語る“行き詰まり脱出法”と“ファミコン”

2017/08/15

行き詰まりからの脱出法

――研究の過程で行き詰まったりすることもあると思うのですが、そういう時の解消法といいますか、閃きを得るためにしていることなどはありますか。

千葉 行き詰まっている時に「あ、そうか!」となるのは、もっぱら朝なんです。つまり、寝ることが大事。外山滋比古も『思考の整理学』(ちくま文庫)のなかで、寝ることの大切さを説いています。寝ている間に考えが整理され、発酵する。だから、寝る時間を作業予定のなかにちゃんと組み込むことが大切です。起きているうちは、仕事は完了しない。寝てるというのは休息であると同時に、制作している時間でもある。

――では、徹夜なんてもう愚の骨頂ですね。

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千葉 基本的に徹夜はしませんね。朝一に締め切りがあるとかそういう場合以外では。それから行き詰まりの解決法としては、友達と喋ります。迷惑をかけてしまうけど、突然電話をして「ところで今こういうことを考えてるんだけれど、どう思う?」みたいなことをいきなり聞く。人と話すことはすごく重要です。僕の書くものには必ず、いろいろな人とのやり取りが必ず織り込まれています。

――ひたすら本を読んで情報を入れることで、行き詰まりを脱するみたいなこともありますか?

©石川啓次/文藝春秋

千葉 それもあります。インプットが足りないから仕事が進まない、ということはよくあります。気になっている本があれば、すぐに電子書籍で買ってパッと読む。で、それを元にまた考える。……そのへんも含めて、基本的に僕は動きすぎなんです。博士論文を元にした最初の本『動きすぎてはいけない ジル・ドゥルーズと生成変化の哲学』(河出書房新社)だって、「動きすぎてはいけない」と、自分で自分を律しているわけですからね(笑)。だからこそ、ちゃんと休むことが大事なんです。そして人と話すこと、これが最も大事かもしれない。今日、インタビュー中に「勉強とは、仮想通貨を作ることである」と気づくことができたのだって、こうして話していたからですしね。

ちば・まさや/1978年栃木県生まれ。東京大学教養学部卒業。パリ第10大学および高等師範学校を経て、東京大学大学院総合文化研究科超域文化科学専攻表象文化論コース博士課程修了。博士(学術)。哲学/表象文化論を専攻。フランス現代思想の研究と、美術・文学・ファッションなどの批評を連関させて行う。現在は、立命館大学大学院先端総合学術研究科准教授。著書に『動きすぎてはいけない――ジル・ドゥルーズと生変化の哲学』、『別のしかたで――ツイッター哲学』、訳書にカンタン・メイヤスー『有限性の後で――偶然性の必然性についての試論』(共訳)がある。今年5月には『勉強の哲学 来たるべきバカのために』を出版し、「東大京大で一番読まれている本」になった。

勉強の哲学 来たるべきバカのために

千葉 雅也(著)

文藝春秋
2017年4月11日 発売

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