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京都でランチ、観光客にはわからない4つの選択肢

京都でランチ、観光客にはわからない4つの選択肢

関西グルメ誌「あまから手帖」編集長が通う 「京都、和食じゃない美味い店」

2017/08/10

genre : ライフ, グルメ

嵐山で、夏には夏の京寿司を

 京都らしいといえば、もう一つ。肉厚の鯖寿司に代表される京寿司も、ぜひ味わっていただきたい。京都では、慶事や祭礼など人の集まるハレの席で振る舞うご馳走として、箱寿司やちらしなどの華やかな寿司が親しまれてきた。その京寿司の基本を踏まえつつ、創意を凝らした品揃えで魅せるのは、『大善』。

京都らしい『嵐山 大善』の外観

 箱寿司や棒寿司などの関西寿司は通年食べられるものが多いので季節感がないと言われるが、ここは違う。それが『大善』の個性であり、数ある京寿司の中で異彩を放つ所以だと私は思う。だから夏には、旬とはいえない鯖寿司はない。代わりに、焼鮎にトリ貝、アジなどの棒寿司がある。

 その焼あゆ寿司950円をゆかり酢で食べる、という発想がいい。甘酸っぱい香りの酢が鮎の野趣を際立たせ、ちょっと軽めの夏純米あたりと爽快な相性を見せる。そうそう奈良「篠峯」や島根「玉櫻」など酒の揃いもよろしく、昼から呑むぞ、という向きも大歓迎。造りから珍味と寿司以外のアテも充実している。締めにはピリッと七味唐辛子が利いた、九条ネギとジャコの細巻き1000円を、ぜひ。

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 ちなみにこちら、持ち帰りもできる。京都観光のラストを嵐山にして、棒寿司や細巻きなどメニューからあれこれ選んで折に詰めてもらい、新幹線でゆっくりいただくのも一興だ。以前、とある方に「楽屋見舞いに向く、夏の京都の逸品をおすすめしてほしい」と請われて、こちらの名物・小鯛笹巻寿司(3個900円)の折をお持ちしたところ、「目にも涼しいですね!」と大変喜ばれた。持ち帰りも考えた酢飯はちょっぴり甘くて、ほんのり笹の香りを纏った小鯛の爽やかな旨みを倍増させていた。

 そうそう、夏におすすめの京寿司と言っておきながら何だが、私の好物は黒七味入りの壬生菜の細巻き。壬生菜は冬野菜なので、これを食べられるのは早くて晩秋なのだけど……。

夏ならではの「焼鮎寿司」