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ラブドラッグ密造で4200万円を売り上げた“教授”の正体

これが「テスラコイル」(名古屋市科学館HPより)

 無から有を作り出すことが古代の錬金術の究極の目標だったとすれば、現代の化学はその正当な後継者に違いない。生み出したものが必ずしも幸せを招かない、という点においても。

 警視庁組織犯罪対策五課は7月19日、合成麻薬MDAを密造したとして、埼玉県の無職・藤山三秀容疑者(51)を麻薬取締法違反(営利目的製造)容疑で再逮捕した。警視庁担当記者が解説する。

「MDAは覚醒剤に似た成分で、共感を強めることから恋人同士で使われるラブドラッグ。藤山容疑者は6月に器具を購入し密造を準備した疑いで逮捕されていました。約2年前から密造を始め、少なくとも4200万円を売り上げたとみられています。売人には『教授』と呼ばれ、いわばマッドサイエンティストです」

 藤山容疑者はもともと稲妻発生装置「テスラコイル」のパフォーマーとして活動していた人物。人気バンドのライブや、お笑いコンビ・ナインティナインのテレビ番組にも出演し、稲妻を発生させる実演を披露したという。が、実は豊富な化学の知識を活かし、別の方面でも顔が売れていた。

「彼は薬物の世界でも一部で有名人だったのです。というのも、『図解アリエナイ理科ノ教科書』という麻薬や化学兵器の製造法など過激な科学をシリーズで紹介する本を執筆した、『薬理凶室』のメンバーだったから。個人としても『薬師寺美津秀』のペンネームで、『乱用薬物密造の化学』という様々な違法薬物の製造法を事細かく記したマニュアル本まで出版していました」(同前)

 ただ、こうした製造法は藤山容疑者のオリジナルではない。MDAは化学者の実験で生まれたものだが、MDAを含む膨大な数の合成麻薬を製造しては自分で効果を試し、そのすべてを本で出版した世界的なマッドサイエンティストがいた。2014年に死去した米国人のアレクサンダー・シュルギン博士だ。

 捜査関係者は「藤山容疑者の本は基礎的な間違いが多いという指摘もあるが、シュルギン博士の本も参考にした形跡がある。実際、警視庁が本の説明に沿って麻薬を作ろうとしたところ、作れてしまった」と打ち明ける。

 本人は「お金を稼ぐ目的だった」と話しているという。

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