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NY州圧勝で暴言封印 トランプに翻弄される米メディア

source : 週刊文春 2016年5月5日・12日

genre : ニュース, 国際, メディア, 政治

「素晴らしい夜だ。ニューヨークを愛している!」
 4月19日、米大統領選挙の候補者指名争いで、ニューヨーク州の予備選を圧倒的な差で制したドナルド・トランプ氏(69)は支持者らを前に感謝を口にした。

決戦投票の仕組みは「不公平」と不満も
Photo:Kyodo

 当初メディアが「すぐ消える」と切り捨てたはずのトランプ氏だが、今や共和党の“大本命”だ。

「暴言を連発して、それをテレビや新聞で報じさせることで宣伝効果をあげるトランプ氏の“炎上商法”に、米国内メディアはまんまとハマった。トランプ氏をとりあげるだけで大きな反響があるので、無視もできない。日本における“橋下(徹)現象”と似ています」(ワシントン特派員)

 そのトランプ氏は、このところ意図的に、暴言を“封印”しているという。

「ニューヨーク州での演説では、いつもは『うそつきテッド』と呼んでいる対抗馬のテッド・クルーズ氏を『クルーズ上院議員』と呼び、『くせ者ヒラリー』となじっていた民主党のクリントン氏についての言及はなし。集会でも原稿を読み上げることが多くなっています」(同前)

 この変わりように、ニューヨークタイムズは4月19日付電子版で、「トランプ氏は別の候補になったかのようだ」と皮肉を交えて伝えたが、これまでトランプ氏に対して批判的な報道を続けてきた米国内の各メディアは困惑気味だ。

「ワシントンポストによると、トランプ氏の妻や長女ら家族が発言を抑えるべきだとアドバイスしたそうです。7月までに指名獲得に必要な代議員数の過半数を得られない場合、党大会での決選投票となる。そこでトランプ氏はアンチ・トランプの多い主流派にアピールすべく、必死になっている、と報じています」(同前)

 だがいくらメディアが「苦肉の策」のイメチェンにすぎない、と叩いても、トランプ氏の方が一枚上手のようだ。

 キャラ変更のためにトランプ氏が選挙参謀として迎えたのが、共和党系の政治コンサルタントのポール・マナフォート氏(67)。ロナルド・レーガンやブッシュ父子などの選挙戦でも活躍してきた大物だ。

「マナフォート氏は4月にトランプ陣営に入るなり矢継ぎ早に改善策を打ち出しています。在日米軍撤退や、日韓核武装容認をブチあげるなどデタラメと批判が多かった外交安保に関して政策を立て直し、近く演説を行います。またトランプ氏がアドリブで暴走しないよう、スピーチライターを起用し、テレプロンプターを利用してなるべく原稿どおりに演説させています」(別のワシントン特派員)

 もっともニューヨーク州で圧勝した翌日のインディアナ州での集会では、抗議のヤジを飛ばす出席者を退場させ、クルーズ上院議員をまたも「うそつきテッド」と呼ぶなど早くも地金が出てしまった。

 指名を獲得するまで、この後も全米最大の州であるカリフォルニア州での6月の予備選など難関が待ち受ける。それまで、トランプ氏は我慢を続けることができるのか。それとも“ニュー・トランプ”の化けの皮が剥がされるのか。米国メディアもまた、その真価を問われている。