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連載THIS WEEK

崔 碩栄
2016/03/10

韓国で爆発的人気
慰安婦映画の陰にちらつく挺対協

source : 週刊文春 2016年3月17日号

genre : エンタメ, 国際, 映画, メディア

「鬼郷」ポスターより

 今、韓国で大ヒットしている映画がある。慰安婦をテーマにした『鬼郷』(監督チョ・ジョンレ)だ。2月24日の公開からわずか11日で観客動員は260万人を突破、社会現象となっている。

 あらすじは、日本軍に殺された少女の魂が70年を経て幽霊となり、慰安婦生存者のもとを訪ねるというもの。だが、映画で執拗に描かれるのは、日本軍による強制連行、残酷な暴力、慰安婦を虐殺し焼き殺す衝撃的な場面だ。画面の中の女性たちの顔は常に血とアザで覆われている。

 観客は、若者層が中心で、場内からは悲鳴もあがる。なぜこのような映画が、かくも大ヒットするのか。

 チョ監督は、元慰安婦が共同生活する施設「ナヌムの家」でボランティア活動をした経験の持ち主だが、この映画の背後には、やはり「挺対協」(韓国挺身隊問題対策協議会)や左翼系市民団体の存在がちらつく。

 映画公開日が反日ムードが高まる「三一節(3月1日の独立運動記念日)」直前だったことからも分かる通り、この映画を反日運動に繋げる狙いは明らかだ。現に、挺対協などは1日、各地で「日韓慰安婦合意無効」を求める集会を開催。マスコミの中には「映画観客数の増加=慰安婦合意への反対者増加」と解釈する全国紙もあった。

 さらにブームを加速させたのが、SNSだ。ツイッターなどに映画のチケットの写真を載せるイベントが流行った。この映画を観ることが愛国の発露であるかのような雰囲気が広がると、4月の総選挙に立候補した候補者たちまで、こぞってチケットを自分のSNSに載せた。

 問題なのは、映画の冒頭で「実話に基づく」とされており、さらに映画広告では「慰安婦20万人」という数字が堂々と使われている点だ。

 当然、作中の歴史考証もいい加減なものだが、「そのようなことはどうでもいい、慰安婦の悲劇に泣けるかどうかが重要」という雰囲気が韓国社会に充満している。映画を酷評した人が「親日派」と罵倒されることもあった。

 朝日新聞が“吉田証言”を取り消したことで、最近では韓国国内でも「20万人説」を唱える人は少数派だが、この映画のおかげでまた亡霊のごとく甦ることになりそうだ。

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