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山本 一郎
2017/08/03

布教活動してきやがる

 ついでにいうと、私は映画も観ません。一昨年子供が観たいというのでドラえもんの映画を家で観た程度で、私生活では映画とか演劇とかもうまったく関心の外なんですよね。仕事でこそ、どこそこの映画が興行収入これぐらいだったやら、この女優を使うとこのぐらい来場者数が増えるよとか、この原作のIPとしての集客力はこのぐらいだなどという話はすれども、その商品である映画も演劇もテレビ番組も興味ないんです。

 でも根っからの映画好きは違う。布教活動してきやがる。おいちょっと。観て感動した映画の話とか、どのハリウッドスターがあーだこーだという話を嬉々としてしてきます。うわ、めんどくせー。わざわざそういう話を私にしなくてもいいじゃん。他でやってくれねえかな。映画好きな奴なんてその辺に掃いて捨てるほどうろうろしてんだろ、そっちで喋ってくれよ。

 そうするとですね、先方もさすがに「あ、やまもとって奴は映画に関心がないんだな」と気づく場合がある。おう、映画に興味なんざ無いとも。お笑い芸人のピース又吉直樹が書いた小説としての『火花』は読むけど、その映像作品として話題になったほうの『火花』は観てない。観てないから視聴者数以外に感想は無い。文学は好きなんだけど、文学を題材にした映像作品は観ないんですよね。なのに、そういう仕事をしているから当然映画やネットドラマも観ているだろう、チェックしているだろうという前提で話をしてくるのがダルいんですよ。

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 ところが、私が興味ないと知ってなお「やまもとさんも映画を観るべきですよ」とか言ってくるギョーカイ人も偉い人も沢山出てくるのであります。うるせえよ。興味ないって言ってんだろ。なんでそう自分の趣味を他人に押し付けてくるのかね。自分の44年の人生の中で観た映画なんて10本ぐらいしかないのに、ここから改心して毎日5本映画観ますなんて話になるわけないでしょう。

 フジロックとか最新の映画とか話題になったテレビ番組とかは、誰もがチェックしていると思って人に踏み込んでくるだけでなく、他人の趣味に干渉してくる人たちってどうして後を絶たないんですかね。