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連載THIS WEEK

森岡 英樹
2016/12/09

名門地銀専務の自殺で波紋広げる
地銀再編積極路線

source : 週刊文春 2016年12月15日号

genre : ビジネス, 企業, 社会, 経済

地銀再編にも積極的に発言する森長官
Photo:Kyodo

 長崎県のトップ地銀・十八銀行の森甲成専務(59)が11月28日早朝、長崎市内の自宅マンションから飛び降り自殺した。旧国立銀行をルーツとする名門地銀幹部の自殺に金融界には衝撃が走った。

 十八銀行は、ふくおかフィナンシャルグループ(FG)と経営統合を決め、来年4月にふくおかFG傘下の親和銀行と合併する予定となっていた。しかし、統合の前提となる公正取引委員会の認可が難航。11月10日には、12月に予定されていた臨時株主総会の延期を発表したばかりだった。

「年明けに最終判断することになっているのですが、いまだ公取委の認可のメドは立っておらず、統合自体が危ぶまれています。専務の森氏には相当な心労になっていたと思います」(地銀関係者)

 統合相手のふくおかFGは、地域銀行再編の口火を切ったトップランナーと言われる。福岡県の有力地銀・福岡銀行が中核となり、経営の悪化していた長崎の親和銀行、熊本ファミリー銀行と統合・提携して、地銀首位に躍り出た。

「その後、横浜銀行と東日本銀行が統合したコンコルディアFGに抜かれたが、十八と統合して、トップに返り咲く絵を描いていた」(同前)

 ふくおかFGの谷正明会長は、長年日銀の天下り先に甘んじてきた福岡銀行待望の生え抜きトップ。

「俳優の高倉健と同じ東筑高校出身が自慢で、理屈より先に行動に出る川筋気質。積極的な再編論者で、九州の地銀頭取として初めて地銀協会長も務めた中興の祖である。その後任の柴戸隆成頭取も積極的な性格でイケイケ路線で知られ、“九州侵攻作戦”を着々と進めていた」(同前)

 この路線をバックアップしていたのが、今や“金融庁のドン”と呼ばれる森信親長官だ。

「地域銀行の改革を一丁目一番地と公言する森長官にとって、積極路線のふくおかFGは地銀再編のモデルケースだった」(金融庁関係者)

 そこに待ったをかけたのが公取委だ。

「十八と親和が合併すれば、長崎県の預金量で7割、貸出で5割のシェアを超える。高い“寡占”に難色を示している」(同前)

 積極路線が思わぬ犠牲者を生んでしまったのか。