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稲田朋美 vs. 蓮舫「水鉄砲」に負けない「ガバナンス」とは何だったのか?

速水健朗×おぐらりゅうじ すべてのニュースは賞味期限切れである

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おぐら 内閣改造の人事が発表されて、「人づくり革命」というフレーズも出てきてびっくりしました。

速水 これは民主党の「コンクリートから人へ」と対で考えるべきだよね。民主党が訴えたのは、公共事業の投資先をコンクリートから人へという方向だったけど、現政権は、「ものづくり」から「人づくり」へということでこの標語を打ち出してきた感がある。

おぐら 「人づくり」って聞いて、AIを連想しましたよ。ちょうど、人間との交流を目的に開発された人工知能のボブとアリスが、人間には理解できない言語で会話をはじめ、Facebookの開発チームがプログラムを強制終了させた、なんていうニュースもありました。

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速水 政府の言う「人づくり」は、社会人の教育や高齢者の活用みたいな話ね。

おぐら 革命担当大臣っていうのも、かなり物騒な響きです。

速水 もう散々ネットで突っ込まれているけど、革命って政府が最もおそれていることだから。

おぐら で、肝心の新内閣の人事については、それぞれ知名度はないけど堅実な人選だと言われています。

速水 正直、おもしろみはないよね。

おぐら やっぱりそうですよね。むしろ、その直前の蓮舫代表と稲田朋美元防衛大臣の相次いでの辞任のほうが興味深いと。

速水 2人とも不倫が理由だったっけ?

©文藝春秋

おぐら 違います! それは新幹線での手つなぎ写真を『週刊新潮』に撮られた今井絵理子の方です。蓮舫代表は、タイミングが微妙ですが都議選の敗戦の責任、稲田元大臣は南スーダンの自衛隊日報隠蔽問題の責任ということになっています。

速水 そっちか。

おぐら 蓮舫代表は、自分で思っていたよりも人気がなかったってことですよね。一本調子の追及スタイルも「ツッコミ過多」で、さすがに飽きられてました。

速水 そうね、白いジャケットとか襟立てとか全部飽きた。でもね、さすがに今回は、不憫だったよ。だって明らかに味方に背中から撃たれてたでしょ。

おぐら 辞任会見では「撃たれたとしても水鉄砲」って言ってましたけど。

速水 精一杯の強がりだよね。結局は、その水鉄砲で代表の座から撃ち落とされちゃった。彼女の場合は、二重国籍問題にスポットが当たったのも党内の声がきっかけだし、最終的に誰もが彼女をサポートするのを拒否したから辞任せざるを得なかった。

おぐら はしごを外されたと。党内の人間関係がうまくさばけなかったっていうことですかね。

速水 そうだね。自民党だったらこうはならない。今度の内閣改造がそうだったようにライバル他派にポストを配分してバランスを取る。

©文藝春秋

おぐら でも稲田元大臣への批判として、「適材適所」ができていないって言われてますよ。それでも内側の論理で組閣って決まるものなんですか?

速水 それ以外にないんだよ。大臣のポスト待ちの重鎮たちが列をなしているし、いまは内閣の支持率も低いから、なおさら安倍総理も勝手にはできない。

おぐら 大臣クラスの人事が、そんなに志が低くていいんですか?

速水 逆に言えば、そういう配分的な組織運営ができなかったから民進党は消滅しそうになってるんだよね。組織に欠かせないガバナンスってやつ。

おぐら 稲田元大臣の場合、さんざん向いてないと言われてましたし、専門家が大臣になるっていう選択肢はないんでしょうか。

速水 それは順番が逆で、大臣が専門過ぎるとそこに既得権が発生するからよくないって言われてきたの。官僚に丸め込まれないってことが「政治主導」や「官邸主導」の本質だったんだよ。だから、今回の稲田の件は、その失敗を浮き彫りにした部分がある。