昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

安田 峰俊
2017/08/09

現代のアヘン窟・三和

――あなたもやはりネトゲ三昧を? 呉用さんはどんなのをやっていたんですか。

呉用 『Legend of Mir』とかだ。まったくカネがないはずなんだが、気がつけば1万元(約16万円)ぐらい課金していた。人から借りたカネだった。ゲーム内の宝箱なんかで得たものも多少はあるけどな。あんたはゲームやらないのか?

『Legend of Mir』中国版の公式ページ。もとは韓国のゲームだが、2001年に『熱血伝奇』の名で中国に上陸してから、ほぼ「中国のゲーム」と呼んでよさそうなほど爆発的なヒットとなった。

――僕もゲームは好きですが、90万元の借金から逃げた先でネトゲに1万元を課金するほどでは……。

呉用 そうだろう。ネトゲは本当に怖いんだぞ。底なしだ。ハマったらもう人生は終了さ。ネトゲの運営企業というのは、ずいぶんと罪深い連中だと思うね。多くの若者に道を誤らせて、次の世代に害を及ぼしている。

――さながら現代のアヘンですね(注.三和がある広東省は往年のアヘン戦争の激戦地である)。で、呉用さんはどういうふうに遊んでいたんですか?

呉用 朝も昼も夜もなかった。十数時間連続でプレイとか普通だったな。6時間の滞在費が5元(約82円)のネカフェで、支払いの時に20元払ったこともあったから、つまり24時間ぶっ続けだったわけだ。

――「(日雇い仕事で)1日働けば、3日遊べる」が三和の合言葉ですからね。

呉用 ああ。2015年当時の話だが、日雇い仕事の稼ぎは1日100元(約1600円)ほどだ。一方でネカフェは1晩いても5元。安旅館は、俺が住んでいたころは1泊10元だった。長く住めば7~8元に下がったな。

三和の安旅館の室内。1泊当たりの滞在費は格安とはいえ、泊まりたいかと言うと……(阿飛氏提供)。

――私が取材した2017年6月時点では、消防関連で当局のお達しがあったらしく、雑魚寝部屋が減って1泊の宿泊費も15元くらいまで上がったみたいです、それでも1日に100元稼いでいれば、しばらくは暮らせそうですね

呉用 日雇い先もピンキリだぞ。もしも扇風機やクーラーがある職場なら、人がいないときにはそこで昼寝することができる。これができる職場なら日給80元でもオーケーだ。涼しいからな。

――三和の暮らしのなかで、ネトゲ以外の娯楽はなかったんでしょうか。

呉用 うーん、 “自動車修理(修車)”かな。三和の隠語だが、意味はわかるか?

――なんとなく見当がつく気がします。ストリートガールですか。

呉用 その通り。とにかく自分の欲求の発散だ。イッパツで80~100元(1300~1600円)くらいだったな。2ヶ月に1回ほどの娯楽だ。

――今年6月の時点では、浄化作戦があったのかそれらしい人はいなくて、ゴッドたちは近所のマッサージ屋さんで200元近くも払って「手」で処理してもらっているようでした。でも、数年前まではその半分以下の値段で相手をしてくれるプロのお姉さんが、普通に道ばたにいたわけですね。

呉用 ただ、美人なんかいるわけはない。三和で暮らすクズたちの相手をするのは、やはりお似合いのレベルの女しかいねえ。欲求がジャンクフード的に解決されるだけだ。場所については、相手側がスラムの上の方の階に部屋を確保していたな。シャワーくらいはあったぞ。

――三和といえば、「三和の女神」の二つ名を持つ”紅ねえさん(紅姐)”と呼ばれる女性が有名だと聞きましたが。

呉用 あれはトシを取りすぎているし、俺でも相手をしてもらいたいとは思えねえよ。1971年生まれだぞ。本人自身、三和の住人からすらも「需要」がなくなってきたもんで、手下のオンナを何人か従えて遣り手ババア(斡旋側)になっていたな。でも、現在はすでに三和を去ったと聞いている。