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クルーズ船「隔離の14日間に何が起きていた?」 64歳乗客が語る“集団感染の現場”

船内で行われていたのは「自室待機」にすぎなかった

2020/03/11
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「クルーズ船で2週間、下船して向かった韓国で2週間、そして日本に帰ってきて、また2週間ですわ」

 新型コロナウィルスの国内感染者数が1000人を超えた。その7割を占めるのが、クルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス号」での集団感染だ。すでに6人の死者を出し、感染者数は700人近くに上る。

 この船に韓国籍の妻と2人で乗り込んでいた平沢保人さん(64)は、本来のクルーズ旅が終わるはずの予定日から1か月が過ぎた3月4日の夜になってようやく、住み慣れた大阪市内の自宅に戻った。

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 それでも憂いは消えない。

平沢保人さんの客室(平沢氏提供)
2月19日未明のダイヤモンド・プリンセス号4階の様子。乗員たち向けに書かれた張り紙には「ホール担当へ お手洗いの利用は3名を入室の限界として陽性・陰性・検査待を内部のメディカルスタッフに伝えるよう利用者へ伝えてください」と書かれている。乗員の中に感染者がいる可能性を意識した表現が生々しい(平沢氏提供)

検査は「陰性」だったが……

 クルーズ船は船内隔離の2週間を終えた2月19日から21日にかけて乗客約1000人が下船したが、その翌22日に栃木県の60代の女性の感染が判明したのをはじめ、5県6人の下船客から感染が確認された。オーストラリアや米国など各国のチャーター機で帰国した外国人客からも陽性の確認が相次いだ。

 これに対して平沢さんは、船内隔離が終了する間際の2月18日の深夜に下船。韓国籍の妻を含む6人の韓国人乗客とともに大統領専用機で翌日未明に羽田空港からソウルに飛ぶと、仁川国際空港近くで50室もの陰圧隔離室を備えた国立の検疫所に移された。

賑やかだったロビー

 その一室に妻と別々に入り、2度目となる14日間の隔離生活を過ごした。

 クルーズ船内で受けたウィルス検査の結果は聞かずに下船したが、検疫所での隔離前と後にそれぞれ受けた検査ではいずれも「陰性」で、韓国政府の厚生労働省にあたる保健福祉部の長官名で発行された証明書も手にした。