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野口 悠紀雄
2017/08/23

財務省vs.官邸 「最強官庁」の失墜――徹底解剖 日本の大組織

 高度成長期まで大蔵省と自民党は似た者同士、共存共栄だったが、バブル崩壊で袂を分かち、ともに漂流を始めた。現在の対立の図式の起原に迫る

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 日本の権力機構の中核は、官邸と財務省であると一般に考えられている。

 これらのどちらが本当の権力なのか? 両者の力関係はどのように変化してきたか? 現代社会の要請にこれらの機関は対応しているか? 以下では、こうした問題について考えることとしよう。

財務省の権力基盤と行動原理

 財務省(大蔵省)の権力基盤は、予算配分権と税制の立案権だ。どちらも経済全体に大きな影響を与える(高度成長期においては、このほかに金融業に対する監督権限があった。しかしこれは、1990年代の金融危機を通じて剥奪(はくだつ)された。これについては後述する)。

 財務省の行動原理は実に単純である。その目的は、自律的な組織を永遠に存続させることだ。ここで「自律的」とは、組織メンバーだけで全てを決定できることである。

 存続性の要請は、仕事の進め方に大きな影響を与える。自分の在任中だけ問題が起こらなければ良いというような刹那(せつな)的な仕事は許されず、長期の考慮が求められる。

 この目的を達成するため必要なことは、2つある。第1は、省の存立基盤である財政について健全性を保つこと。つまり、財政破綻を引き起こさないこと。第2は、人事に関して、政治からの独立性を維持することだ。

 財務省が官庁の中で特異な存在とみなされるのは、世の中がどうなろうと、国が存在する限り、税を徴収し、予算を通じて支出するという仕事がなくなることはないからだ。予算編成権を他の機構に移そうという試みは何度もなされたが、予算編成が不必要という議論はない。

 省庁によっては、その存立理由に疑問があるところが少なくない。例えば経済産業省の産業政策は本当に必要なのか? 農林水産省は農業を保護する必要があるのか? 消費者庁や観光庁は、予算と人員の無駄使いそのものではないか? 等々。それに対して、財務省は、存在の必要性を主張するのに、誰の支援も必要としないのである。

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