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伊藤 惇夫
2017/08/22

自民党vs.共産党 大変身は成功するか――徹底解剖 日本の大組織

「議席3分の2確保で改憲」か「野党共闘で国民連合政府」か? 対照的な2つの政党は日本の政治をどう変えてゆくのか

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安倍晋三自民党総裁 ©文藝春秋

 7月の参議院選挙、結果は安倍政権が目指した「改憲勢力による3分の2の議席確保」という目標が達成されて幕を閉じた。この結果が、「自民圧勝」なのか、それとも「野党善戦」だったのかは、見方の分かれるところだろう。だが、32ある1人区での勝負に限ってみると、自民21勝対野党11勝という数字は、極めて興味深い。1人区に限っていえば、全選挙区での野党統一候補擁立(ようりつ)作戦が、それなりに成果を上げたといってもいいだろう。仮に民進党が単独で戦った場合、1人区では3~4議席しか確保できなかったという推測もあるほどだ。

 さて、今回の参院選、言うまでもなく野党第1党は民進党。当然、野党側の主役は民進党だったかに見える。焦点は「自民党対民進党」という対決構図だったはずだ。だが、本当にそうだろうか。確かに議席の上では民進党が最大野党であることはいうまでもない。だが、この参院選挙で政権与党側、つまり自公両党が最も意識した“敵”は民進党ではなく、実は共産党だった。

 共産党が従来の方針を大転換し、香川県を除く全ての一人区で候補者擁立を見送るという、大胆な決断がなかったら、全32の1人区で野党共闘が成立することはなかっただろう。その結果の21対11だとすれば、“仕掛け”たのは共産党であり、野党内で主導権を握り、他の野党はこれに追随、あるいは巻き込まれる形で従った、というのが実際の構図だったのではないか。

 確かに共産党はこの選挙で、「比例850万票以上、9議席獲得」という目標には届かず、選挙区1、比例5にとどまった。1人区での候補者擁立を見送ったために、比例票が伸びなかった可能性もある。その意味では、一見、野党共闘を実現するため、敢(あ)えて共産党が犠牲的精神を発揮したととれなくもない。

 だが、共産党は今回、「それ以上のもの」を手に入れたはずだ。それは野党陣営内での「孤立」からの脱却であり、一般の有権者が抱いていた拭いがたい警戒心、アレルギーの大幅な緩和といってもいい。野党共闘を成立させたことで、共産党は少なくとも表面的には「普通の政党」に変身を遂げつつある。

 その意味で、今回の参院選挙における野党側の真の主役は共産党ではなかったか。となれば、自民対民進という対決構図はあくまでも表面的なものに過ぎず、その実態は「自共対決」だったのかもしれない。

 今回のような野党共闘の構図が、今後も続くかどうかは不透明だ。共産党が掲げる「国民連合政府」構想が実現する可能性は低い。だが、「したたか」な野党に変身しつつある共産党の挑戦は今後も間違いなく続いていく。そのターゲットは言うまでもなく自民党だ。「自共対決」はこれからが本番かもしれない。