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芥川賞受賞者インタビュー
僕たちはこんな本を読んできた 芥川賞作家のこれまでとこれから

村田沙耶香インタビュー「バイトは週3日、週末はダメ人間です」 #1

コンビニを通して、初めて世界に溶け込めた

source : 文藝春秋 2016年9月号

genre : エンタメ, 読書

――受賞作『コンビニ人間』は自身のコンビニでのアルバイト体験を元に書かれたとのことですが、選考会の当日もお仕事をしていたそうですね。

村田 普段どおり朝8時から午後1時まで、もりもり働いていました。選考会のあった火曜日はおにぎりやポテトチップスなど新商品が店頭に並ぶ日で、いつもよりやるべきことが多いんですよ。新商品を棚に並べたり、ポップを入れ替えたりと、けっこう忙しい日でした。

 その後、編集者さんと合流して、カフェで結果を待ちました。

――受賞の連絡が来たときは、どのような気持ちでしたか?

村田 初候補での受賞でしたし、すぐには信じられず、何を言われたのか覚えていないんです。一緒に待っていた編集者さんに「おめでとうございます」と声をかけられても、「聞き間違いかもしれないです」って言ってしまったぐらい(笑)。ただ、帝国ホテルの控え室に来るようにと言われたことだけが記憶に残っていて、指定された部屋の名前を頭の中で何度も繰り返していました。会見場に行ってからも夢みたいで、ずっとフワフワした気持ちでした。

村田沙耶香さん(右)と、直木賞を受賞した萩原浩さん ©文藝春秋

 お祝いの会には、仲のいい西加奈子さんや中村文則さんから、初めてお会いした田中慎弥さん、金原ひとみさんまで、たくさんの作家の方々が集まってくださいました。先輩受賞者には「しばらく忙しいから肉を食っておけ」と言われ、ローストビーフを注文していただきました。

 家に帰ると、洋服も脱がずにベッドに倒れこむようにして寝てしまいました。2時間ほどで目が覚めた後、ようやく「受賞した」という実感が湧いてきて、その後は興奮してまったく眠れなかったです。

――色々な方からお祝いのメッセージが送られてきたのでは?

村田 前の前の店長や、もっと前の店長からお祝いのメールを頂戴しました(笑)。今回の受賞でバイトも休まざるを得ず、今の店長には「ご迷惑をかけてごめんなさい」とシフト変更の相談をしました。そうしたら「こういう『迷惑』はかけてもらって嬉しい迷惑ですので気にしないで下さい」という返事を貰いました。若くて頑張り屋さんだとは思っていましたが、「わあ、店長ってこんな人格者だったんだ」と気付かされました。作中の店長とは性格は全く違います。当たり前ですけど。父からは「対応が大変だろうが、冷静に対処するように。安物のワインを買って待つ」と、メールが来ました。

――クールなお父様ですね。

村田 父は真面目で働き者で、単身赴任している時期も長かったのですが、夏休みには両親の実家やキャンプに連れて行ってくれるなど、家族サービスも沢山してくれました。母は本好きでとても優しい専業主婦です。兄は6歳年上なので、一緒に遊ぶというよりは子守のような感じだったかもしれません。非常にホッコリとした家族でした。

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