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鳥集 徹
2016/05/10

「がん検診」受けるべきはこんな人【全文公開】

source : 週刊文春 2016年4月7日号

genre : ライフ, 医療, ヘルス

●胃がん ピロリ菌感染者
●大腸がん 家族が患った人
●乳がん 初潮が早かった人ほか

本誌も3月3日号で報じた、権威ある医学誌に発表された「がん検診は意味がない」という論文は大反響を呼んだ。ただ、その一方で“がんになるリスクが高い人”が存在することも事実だ。そのような“高リスク”の判別法と、その後の対処法をがん種別に解説する。

    ◇    ◇

乳がん検診に使用するマンモグラフィ
Photo:Jiji

「がん検診を受ければ、長生きできる」

 一般の人だけでなく医師にも、そう思い込んでいる人が多い。しかし、そのような考えは、時代遅れになりつつある。

 今年一月六日に、権威ある医学誌の一つ「BMJ(英国医師会雑誌)」に、「がん検診を受けても、総死亡率(あらゆる原因を含めたすべての死亡率)が下がる証拠はない」とする論文が掲載された。

 たとえば乳がん検診を受ければ、乳がん死亡は防げるかもしれない。だが、「命に関わらないがん」を多く見つけて、過剰な検査や治療を受ける人も増える。そのため、がん検診の効果が打ち消されてしまうというのが論文の要旨だ。

 その詳細は本誌三月三日号の記事「『がん検診は意味がない』の衝撃 米国で論文発表」で報じたが、がん検診のメリットは我々が思うほど大きくなく、治療が不必要な病気を多く見つける「過剰診断」の害を受ける可能性すらある。だとしたら、論文の著者らも書くように、「検診を受けないことは、多くの人にとって合理的で賢明な選択」だと言えるだろう。

 とはいえ、「検診を受けないのは不安」という人もいるはずだ。そこで近年、医学界では新たな方法が模索されている。それが「がんリスク検診」だ。すなわち、がんリスクの高い人に絞って検診すれば、より効果が高くなり、過剰診断も減らせるとする考え方だ。

 どんな人が、リスクが高いのか。その場合、どう対処すればいいのか、がん種別に専門家に取材した。

 

■胃がんと食道がん

 よく知られているように、胃がんの発生の多くに、バクテリアである「ヘリコバクター・ピロリ(いわゆるピロリ菌)」が関係している。

 ピロリ菌の感染は井戸水などを介して広がったと考えられている。そのため、感染率は高齢になるほど高く、七十歳以上だと八〇%以上にもなる。ピロリ菌の感染によって、胃粘膜の萎縮が進むと、さらに胃がんのリスクが高くなる。

 そこで、胃がんを見つける前にまず、ピロリ菌感染と胃粘膜の萎縮の有無によって、胃がんのリスクを評価する検診が研究されてきた。それが「胃がんリスク検診(ABC検診)」だ。

 ピロリ菌感染がなく、胃粘膜の萎縮もない人はA、感染のみの人はB、感染と萎縮のある人はC、ピロリ菌が住めないほど萎縮が進んだ人はDと評価される。これまでの研究から、胃がん発生リスクはAに比べBで約五倍、Cで約十倍、Dで約十五倍高いことがわかっている。

 感染と萎縮の有無を調べる検査は、血液を取れば簡単かつ安価にできるため、すでに検診に採り入れている自治体や企業もある。

 この検診を推進する「日本胃がん予知・診断・治療研究機構」事務局長の笹島雅彦医師が解説する。

「この検診の目的は受診者本人に、自分が胃がんになりやすいかどうかを知っていただくことです。A評価でも胃がんになる人はいます。ですがリスクは低いので、一度は念のため胃がん検診を受けて胃粘膜の萎縮がないと確認できれば、症状がないかぎり、その後は胃がん検診を受ける必要はないでしょう。一方、BからDの人は定期的に胃の検査を受けたほうがいいということになります」

 ABC検診を推進する医師が高リスクの人に勧めているのが、いわゆる胃カメラによる「内視鏡検査」だ。国は長らく胃がん検診として、「バリウム検査」だけを推奨してきた。だが、二〇一五年から、バリウム検査に加え内視鏡検査も推奨するようになった。

「バリウム検査も、胃がんを見つける技術が高められてきました。しかし、これが始まったのは、胃の内部を直接見る技術がなかった六十年以上前の話で、胃粘膜を直接観察できる内視鏡検査のほうが優れているのは当然です。X線被曝もあるバリウム検査にこだわる理由はありません。

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