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二宮 寿朗
2017/08/15

川崎フロンターレ・鬼木監督と考える「ゼロからのリーダーシップ」#1

風間八宏監督を継いだ43歳の“新米監督”が語る

 比較されやしないか、失望されやしないか。

 カリスマ的なリーダーの後にバトンタッチを受ける人は大変だと、勝手な想像と、要らぬ心配をしてしまう。

 ビジネスの世界や一般社会のみならず、サッカーにもそんなリーダーの交代はある。

 今季から川崎フロンターレを率いるのが、昨季までコーチを務めた43歳の鬼木達(とおる)氏。5年間掛けて魅惑的な攻撃サッカーを築き上げ、昨季は年間勝ち点で2位に引き上げた風間八宏監督の後任としてコーチから昇格した。守備を整備して、攻守一体のチームづくりに着手。監督初経験ながら、アジアチャンピオンズリーグ(ACL)で8年ぶりのベスト8進出を果たし、Jリーグでも優勝を狙って上位につけている。

 いかにして「カリスマ後のフロンターレ」をうまく導いているのか――

◆ ◆ ◆

 

経験ゼロの自分でいいのかな、と

――印象深いゲームが5月19日の鹿島アントラーズ戦でした。昨年、チャンピオンシップ準決勝、天皇杯決勝と大きな試合で勝てなかった試合巧者の王者に対して、3-0と圧勝しました。この試合は鹿島のお株を奪うような球際の強さが目立ちました。

「僕のなかでは、まだまだというか、3-0になってから押し込まれているんですよね。でも選手同士で『もっとこうできたでしょ』とか『押し込まれたところを何とかしないと』みたいな会話が出ていたんで、僕と同じ意識だから特に言う必要はないかなって」

――前線からのプレスがフロンターレの新たな持ち味になっていますよね。

「風間さんは言葉を選びながら、敢えて守備に触れないことで攻撃を意識させたりしていました。凄くカリスマ性を持っているし、ブレない人ですよね。逆に言ったら、僕は何もない(笑)。これを言ったら、ブレちゃうなとかも考えないし、自分としては今、守備が大事だと思ったら言います」

――風間さんの退任が発表され、クラブから監督就任の打診があったとき迷いはありましたか。

「風間さんの後うんぬんよりも、自分に監督経験がなかったので、果たして自分でいいのかな、と。自分としてもジュニアユースやユースの監督を経て、トップチームでやりたいと決めていましたから。ただ、クラブとすれば風間さんのサッカーをベースにしたいということで、僕がコーチ歴で一番長かったので。だけど全部は継承できない。だって風間さんのサッカーをどう発展させるかは風間さんしか分からないですし、継承しつつも自分のやり方にシフトチェンジしてやっていかないと、とは考えていました」

嘘をつかずに、素のままで

――そのカリスマ性の強い風間さんの後を引き継いだわけですが、どういうリーダーになっていくかイメージはありましたか。

「僕、コーチのときから選手に対して遠慮せず叱っていましたし、素のままの自分でいるようにはしました。自分を出す、自分に嘘をつかない、ですかね」

――素のまま、自分を出す、自分に嘘をつかない。何か具体例をいただければ。

「そうですね……風間さんって、すごく言葉を大事にする人じゃないですか」

 

――分かります。「どこまでこだわれるかも技術のうち」「体に限界はあっても頭のなかは限界がない」などいろいろな“風間語”がありますよね。

「それこそ風間さんが大事にしていた言葉を、僕もいい言葉だと思って大事にしてしまうと選手に伝わらないと思うんです。だから違う形で、それも自分の言葉で伝えていかないといけないなって」