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鳥集 徹
2016/05/10

飲むと顔が赤くなる人は要注意

 ただ、内視鏡医の数がまだ少なく偏在しているので、対象者全員に一律に実施することは困難です。ですから、集団検診で行う場合はリスクが高い人を優先して検査するのは当然だと思います。その意味でも、胃がんリスクを評価できるABC検診は意味があると考えています」(笹島医師)

 内視鏡検査を受ければ、食道がんの有無も同時にチェックできる。

 食道がんは飲酒、喫煙と関連が強く、飲むと顔が赤くなる人はとくに要注意だ。該当する人は食道がんのことも念頭に置いて、内視鏡検査を受けるといいだろう。

 

■大腸がん

 日本人のがんで増えているのが大腸がんだ。国立がん研究センターが公表した二〇一五年のがん罹患者数の予測値でも、大腸がんは肺がん、胃がんを抜いてトップだった。

田中医師

 それだけに、誰もが注意する必要はあるが、その中でもとくに大腸がんリスクの高い人がいる。「大腸ポリープ診療ガイドライン2014」(日本消化器病学会編)の作成委員会委員長を務めた広島大学病院内視鏡診療科教授の田中信治医師が解説する。

大腸がんを患った家族、親せきの多い人や、内視鏡検査でポリープがたくさん見つかった人は、遺伝的になりやすい可能性があります。また、潰瘍性大腸炎やクローン病など大腸が炎症を起こす病気の人も、罹患年数が長いほどリスクが高まります」

 現在、国は大腸がん検診として、採取した便の中に血が混じっているかどうかを調べる「便潜血検査」を推奨している。欧米で実施された臨床試験を統合して解析した研究で、便潜血検査には大腸がん死亡率を一六%減らす効果が認められた。ただし、冒頭のBMJの論文では、大腸がんでの死亡を防ぐ効果はあるが、総死亡率を減らす効果はあってもかなり小さいと指摘されている。

 だが、田中医師は、「それでも便潜血検査は受けてほしい」と話す。

「この検査を千人が受ければ百人が『要精密検査』となり、その中で数人に大腸がんが見つかります。つまり、これによって大腸がんリスクが高い人を絞り込むことができるのです。それに、この検査で陰性なら、無駄な内視鏡検査をしないで済みます。つまり便潜血検査は、リスク評価をしているとも言えるのです」

 自分のがんリスクを知るという意味で、便潜血検査を受けることは意味があるかもしれない。

 この検査を受けて要精密検査とされた人や、冒頭の高リスクに該当する人は、医師と相談して、定期的に内視鏡検査を受けたほうがいいだろう。

 

■乳がん

 生涯、十二人に一人が罹患するとされる乳がんだが、この病気も高リスクの人がいるとわかっている。

 まず、遺伝的にリスクの高い人がいる。その可能性があるのが、若いうちに乳がんや卵巣がんになった家族、親せきのいる人だ。また、すでに乳がんになった人では、両乳房にできた人、片方に二回以上できた人、男性なのになった人が、遺伝性の可能性がある。日本人の乳がんの約一〇%が遺伝性と推測されている。

 遺伝的なもの以外では、初潮が早かった人、閉経が遅い人、出産経験のない人や初産年齢の高い人、授乳経験の少ない人、肥満の人、ホルモン補充療法を五年以上受けた人も、疫学調査で乳がんのリスクが高いことがわかっている。

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