昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

鳥集 徹
2016/05/10

過剰診断が多いとされる乳がん

 現在、乳がんは乳房専用のX線装置「マンモグラフィ」による検診が推奨されている。かつては、乳がん死亡率を減らす切り札のように言われてきたが、ここ数年、欧米の臨床試験で総死亡率どころか、乳がん死亡率すら減らないとする報告が相次ぎ、効果に疑問符が付き始めている。

 とくに乳がんは過剰診断が多いとされている。なぜなら検診を実施すると「非浸潤性乳管がん(DCIS)」と呼ばれる早期がんが多数発見されるのだが、その中に相当数の「命に関わらないがん」が含まれる可能性があるからだ。

 昭和大学病院乳腺外科教授の中村清吾医師によると、過剰診断を避けるために、非浸潤性乳管がんをすぐに治療せず、経過観察する臨床試験が国内外で行われているという。

 また、欧米では非浸潤性乳管がんを「がん」と呼ばず、「上皮内新生物」と呼んで区別すべきだとする声もあるそうだ。

 ただし、非浸潤性乳管がんの一部には、放置すると周囲に広がり(浸潤し)、命取りになるものもある。それだけに、浸潤するかどうかを見分ける技術の開発が不可欠だろう。中村医師によると、実は米国では、そうした検査がすでに実用化されているという。

「十三種類の遺伝子を調べることで、将来、浸潤がんになるリスクが高いかどうかを調べる検査があり、米国では自費で検査できるようになっています。

 こうした技術の研究がさらに進めば、見つかった非浸潤性乳管がんが放置してもいいものか、それとも早く取ったほうがいいか、区別できるようになるかもしれません」(中村医師)

 日本でも組織を米国に送って検査を受ける人がいるが、自己負担で数十万円の費用がかかる。

 乳がんが不安で、やはり検診を受けたい人はどうすればいいだろう。まず知っておくべきことは、マンモグラフィ検診は絶対ではないということだ。とくに二十代、三十代は「受けるべきではない」と中村医師は断言する。

「よく『雪の中の白うさぎを見つけるようなもの』とたとえられるのですが、マンモグラフィを撮ると、若い人ほど乳腺が発達しているため白色が濃く映り、腫瘍を見つけにくいのです。四十代でも乳腺が発達している人は、見逃される可能性があります。ですから、若い人や乳腺が発達している人は、エコー(超音波)で調べてもらったほうがいいのです」

 それに、若いほど放射線の影響を受けやすく、遺伝的に高リスクの人は、マンモグラフィを頻回に受けると、がんを誘発しやすいとする研究もある。

 なので、若い人は、自分で乳房を触って、気になるしこりがあったときだけ、専門医を受診し、エコーを受けるといいだろう。たまたま見つけた人より、毎月一回意識的に触っていた人のほうが、小さいうちに見つかるという研究データもあるそうだ。まずは自分の乳房の健康に関心を持つことが大切だ。

 

■子宮頸がん

 この病気はヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因だ。HPVには百種類以上のタイプがあり、その中に発がんリスクの高いタイプが十三種類ある。したがって、まずは自分が高リスクのHPVに感染しているかどうかを知ることが重要だろう。

 現在、国は子宮頸がん検診として、子宮の出口(子宮頸部)から組織をこすり取って、細胞の状態を顕微鏡で調べる「細胞診」を推奨しているが、実は高リスクHPVに感染しているかを調べるHPV検査も、すでに実用化されている。

 現在、このHPV検査は、がん検診などで「ASC-US=意義不明な異型扁平上皮細胞」と診断された一部の人だけに保険適用とされているが、産婦人科などに行けば、誰でも自費で四~五千円で受けることができる

笹川医師

 この検査を検診に全面採用すべきと主張する医師が少なくない。HPVに詳しい金沢医科大学産婦人科主任教授の笹川寿之医師もその一人だ。

「HPV検査を検診で実施すると偽陽性(がんではないのに、異常ありと診断されること)が増えて、女性に不安を与えるという理由で反対する医師がいます。しかし、感染が事前にわかれば、細胞診も丁寧にしますから、逆に見逃しが少なくなるはずです。実際にそのような論文も一流雑誌から出ています。また、HPV検査で感染していないことがわかれば、五年間は細胞診を受ける必要がないとされています。そうしたことから、米国ではすでに、細胞診との併用で、HPV検査を先にしようという流れになっています」

 二十五歳以上の女性は一度受けて、陽性の場合は産婦人科医に相談するといいだろう。また、子宮頸がんは喫煙によってHPV感染後の発がんリスクが上がるという研究もある

【次ページ】「命に関わらないがん」も多い