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鳥集 徹
2016/05/10

「命に関わらないがん」も多い

■肺がん

 タバコと言えば、喫煙で肺がんリスクが高まることは言うまでもない。国立がん研究センターの疫学研究によると、喫煙者は非喫煙者に比べ、男性で四・四倍、女性で二・八倍高くなる。

 三月三日号の記事でも書いたとおり、国は胸部X線検診(喫煙者など高危険群は喀痰細胞診併用)を推奨しているが、欧米の研究では有効性が証明できなかった。そこで、より小さな肺がんを見つけることができるCT検診が国内外で試みられてきた。

金子医師

 米国では、喫煙者を対象にCT検診の効果を調べる臨床試験が実施され、胸部X線検診に比べ、肺がん死亡率が約二〇%減るという結果も出ている。肺がんCT検診認定機構代表理事・(公財)東京都予防医学協会 保健会館クリニック所長の金子昌弘医師はそのメリットを強調する。

「国内でも、CT検診で肺がん死亡率が減ったとする研究があります。それに、CTを撮れば肺がんだけでなく、肺の健康状態がわかり、それをきっかけに禁煙する人が少なくありません。タバコをやめれば、心筋梗塞や肺気腫で苦しむ人が減ります。したがってCT検診にはがん検診だけでなく、総合的な健康診断的価値があると考えています」

 ただし、CT検診には注意点もある。それは、「すりガラス状陰影」という淡い影のように映る病変がたくさん見つかることだ。以前は「早期がん」とみなされ、積極的に手術される傾向があった。ところが、あまり大きくならず、転移もしない「命に関わらないがん」が多いこともわかった。そのため最近では、小さくて影の淡いものは、経過観察する場合も増えている。

 とくに手術の合併症が起こりやすい高齢者は、あわてて治療しないほうがいい。肺のCT検診にもメリットばかりでなく、治療の不必要ながんを多く見つける過剰診断があることを知っておくべきだろう。

 また、CT検診だけでなく他のリスク検診も、本当にがん死亡率や総死亡率を減らす効果があるかどうか、検証はこれからだということを理解して受けてほしい。

 従来のがん検診では、十分な科学的評価を怠ってきた結果、無益などころか害さえある検査法が漫然と採用されてきた。リスク検診についても、関係者は利益ばかりを強調するのではなく、有効性を科学的に検証して、その結果を率直に国民に伝えるべきだろう。