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濱本 良一
2016/06/19

尖閣の接続水域に中ロが同時侵入
連携はあったのか

source : 週刊文春 2016年6月23日号

genre : ニュース, 政治, 国際

海自艦と中ロ軍艦の動き(イメージ)
Photo:Kyodo

 尖閣諸島周辺の東シナ海で8日から9日にかけて中国海軍とロシア海軍の艦艇がほぼ同時に「接続水域」に侵入する事件が起きた。中国軍の艦艇が、接続水域に侵入したのは、初めて。

 今回の中ロ海軍の行動は当初から計画されたものか否か判断が分かれる。双方とも魚釣島を外し、周辺の久場島と大正島に照準を当てた。大抵の中国非軍事公船「海警」は魚釣島が標的だ。段階的に行動して自衛隊の即応能力を観察する狙いがあったのか。

 侵入は深夜から未明で、暗闇に乗じたような行動だった。最大の注目点は、クリミア危機以降、緊密度を増すロシアを巻き込んだことだ。9日夜の中国中央テレビが「中ロ連携」を強調していたのは、ひとつの手掛かりだろう。

 中国軍艦が久場―大正島間の接続水域をU字型に航行したのは9日午前零時50分から同午前3時10分までの2時間20分。これに対して両島の間を南方から北方に直線状に抜けたロシア軍艦3隻は8日午後9時50分から翌9日午前3時5分までの5時間15分と2倍以上に及んだ。この時間に謎を解くヒントがありそうだ(上図参照)。

 ロシア艦が同水域に入って3時間後に中国艦が侵入した。中国艦は尖閣から同時間の距離まで接近、待機していた。接続水域内の航行距離はロシア艦が約130kmと中国艦の距離の約2倍で、これは両者の“侵入時間”にほぼ比例する。

 そしてロシア艦が接続水域を出た5分後に随伴していた中国艦も同水域を出たのである。最後の随伴部分は中ロが連携したことが明白だ。今後、当時の交信状況を検証すれば、その実態は明らかになるだろうが、ロシア艦の尖閣付近の航行(今回が初めてではない)を察知した中国艦が急きょ接近し、ロシア艦と一緒に行動した事実が重要だ。

 東シナ海・南シナ海問題については、伊勢志摩G7サミットで「状況の懸念」を共有し、中国包囲網が形成された。今回の事件は、それに反発した中国がロシア軍艦の航行・通過を巧みに利用し、対日主権宣言のレベルを一気に引き上げたことを意味している。中国海軍の緊急即応態勢が始動している事実を突き付けられたことで、尖閣を巡る安保体制は新たな局面に突入したのである。