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【オリックス】T-岡田が1番打者に向いているこれだけの理由

文春野球コラム ペナントレース2017

2017/08/09
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「4番・T-岡田」との別れ

 あなたが私にくれたもの、1位指名の記者会見。あなたが私にくれたもの、イチロー選手のお墨付き。あなたが私にくれたもの、ウエスタン・リーグの2冠王。あなたが私にくれたもの、2010年のホームランキング。あなたが私にくれたもの、熾烈な外野のベストナイン。あなたが私にくれたもの、CS沸かせた逆転弾。

 我々世代にはあまりに有名な「JITTERIN’JINN」の「プレゼント」。歌詞の通り色々な贈り物と思い出を貰った大好きな彼とお別れをする歌である。この歌詞さながら、ついに我々にもお別れの時がやってきたようだ。誰と? 勘の良いBsファン同志諸君ならもうお分りだろう。そう我々が愛した「4番・T-岡田」とのお別れである。

 いやいや、冒頭から不吉なコラムのようだが、決してそうではない。「4番・T-岡田」とのお別れであって、「T-岡田」とのお別れではないのだ。そう、8月5日・6日に見たBsの新オーダー。初見にして心を鷲掴みにされたファンも多い事だろう。それほど「1番・T-岡田」の存在は頼もしく、また今後数年のBsの戦い方として多くの可能性を見出してくれたオーダーだったと思うのだ。

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ここ数試合、一番打者として起用されているT-岡田 ©文藝春秋

パ・リーグを代表するリードオフマン

 もともとチャンスに弱かった訳ではない。冒頭の替え歌さながら、幾多の名シーンと劇的な試合結果を我々に提供してくれた。その頻度があまりに貴重だった故、いつからか我々は彼のことを「チャンスに期待できない」と思ってしまうようになった。繰り返すが「チャンスに弱い」訳ではなく、「チャンスをものにする」頻度が少ないだけなのだ。そこを履き違えて「6番・T-岡田」や「7番・T-岡田」に、クリーンナップの後方からの援護射撃を求めるようになっていたのだろう。

 しかし、今シーズンの彼は別の役割を淡々とこなしていた。つなぎの打撃をこころがけ、コツコツとチャンスを作り続けているのだ。言わばチャンスメーカーの役割を買って出たT-岡田。出塁率の高さがその打撃を物語っている。T-岡田の出塁率は現在パ・リーグ3位の成績で、柳田悠岐(ソフトバンク)、秋山翔吾(西武)に続く成績である事からも、じゅうぶんにパ・リーグを代表するリードオフマンと呼んでも良いだろう。併せて、ここまでのOPSも.898と優秀、長打率も.506と上位に配置した方が良いのは明確である。また、これは出塁率にも関連してくる事だが、T-岡田は、意外にも一塁到達スピードが優秀なのである。左打者であるアドバンテージが生きているのだろうが一塁到達4.11秒を記録しており、MLBの5傑入りしたイチロー選手が3.94秒であるから長打率を鑑みれば申し分ない数字のように思う。実は1番打者に必要な要素を多く持ち合わせた打者なのだ。

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