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大山 くまお
2017/08/11

私が菅官房長官に「大きな声」で質問する理由 東京新聞・望月衣塑子記者インタビュー#1

「官邸の一存」の強さが悪い方に加速している

――点と線とおっしゃいましたが、どういうことなんですか?

望月 もともと私は武器輸出の問題を取材し続けていました。2014年4月に「武器輸出三原則」が撤廃されて「防衛装備移転三原則」が決まり、武器を他国に売って海外と共同開発も行っていくという方向に転換したことがきっかけです。これまでの「戦後70年」とは明らかに違う動きが出てきているという恐怖と、未来の子どもたちの為に何とかしなくてはいけないという思いに駆られるようになりました。

 

 これに重なって取材をしていく中で、大きな動きだと思ったのが、教育基本法の改正です。2006年、第1次安倍政権のときのものですが、教育基本法の前文の精神がなくなり、愛国心とか道徳とかナショナリズムを全面出す形に法律が変わった。取材で知りましたが、森友学園問題の籠池(泰典)さんが安倍さんに心酔した大きな理由は、これなんですよね。一方で、前川喜平前文科事務次官にインタビューしたとき、彼はこう言っていました。政権に疑問を感じるようになったのは、民主主義を根付かせるために作られた教育基本法が改正され、その精神が変わり、改正した教育基本法が愛国心を強化する流れになったときからだと。

――国のありかたが明らかに変わってきたと……。

望月 そうですね、その後、第2次安倍政権になり「安倍一強」となりましたが、「官邸の一存」の強さが悪い方に加速していると思うんです。加計学園問題の資料を出すか出さないか、森友学園の8億円値引きの経緯についての行政文書を出すか出さないかも「官邸の一存」次第。権力の中枢部でいったい何が起きているのかという疑問がすごく湧いてきました。

――望月さんはTBSの山口敬之・元ワシントン支局長の女性への暴行事件の「もみ消し疑惑」を訴えた詩織さんにインタビュー取材もされていますが、これに前川前次官、籠池氏といった取材で得た「点」が連なり、官邸権力という「線」が見えるようになったと。

望月 おまけに私が取材していた武器輸出を巡って、経産省、財務省の役人を呼びつけていろいろ指示していたのが和泉(洋人)補佐官。加計学園問題でもキーパーソンとして名前が挙がって驚きました。ここもつながりますか、と。

「菅話法」はある種の決壊状態だと思います

――6月6日以降、定例会見で望月さんが矢継ぎ早に質問を浴びせていく姿がおなじみになりましたが、同時に菅官房長官が「問題ない」「あたらない」と言い続ける、いわゆる「菅話法」も多くの人の目に触れることになりました。これだけ何も答えてもらえないと、質問していても嫌になりませんか?

望月 「問題ない」以外言えないのかな? って思いますけどね(笑)。番記者の方たちは2年半以上取材している方も多いそうなので、「菅話法」に慣れと諦めがあるのかもしれません。私は「菅話法」のことをまったく知らずに飛び込んでいったので、その強みはあったのかな。そもそも部外者なので、怖さを知らない(笑)。ここは重要だったと思います。その後、だんだん怖さがわかってきて、杉田さん(和博・内閣官房副長官/内閣人事局長)もいろいろ聞くと怖いですね。

手を挙げる望月記者を指す菅官房長官 ©時事通信社

――毎日新聞が「鉄壁ガースー決壊」と報じましたが、望月さんから見て「菅話法」が決壊した瞬間はあったでしょうか?

望月 どなたかがツイッターで「壊れたラジオ」とおっしゃっていましたけど、同じ言葉を繰り返しているのも、ある種の決壊状態です。「問題ない」「私の担当ではない」と言い続けるしかないし、本当は答えられるようなことも「何か言ってはマズい」と防御反応が働くから同じ答弁を繰り返すしかないのかもしれません。この前、TBS『あさチャン!』で菅さんが「国会で総理が説明した通り」「国会でお答えした通り」と同じ内容の答えを同じ日の記者会見で計10回も繰り返していたと放送していました。

――「壊れたラジオ」を目の当たりにして、「おかしい」と思うようになった人は増えたと思います。それが望月さんの空気を読まない質問でわかりました。一方、今は首相に記者が直接取材する「ぶら下がり」がないんですよね。

望月 8月3日の内閣改造発表後の記者会見でも、決まった社しか指していないと思います。安倍さんが加計学園の疑惑に対して、記者の取材に直接答えるのが一番理想ですけど、官邸は、安倍総理を何が何でも護ろうと必死ですから、そうはならないでしょうね。だから、ある意味、菅さんが一番大変だと思います。総理の疑惑の矢面に立ち、答え続けなければいけないので。

――でも、政権と官邸にアクセスする方法が他にない以上、菅さんに質問し続けるしかない。

望月 ないですよね。私たちがノックできる扉はそこしかないんですから。菅さんは菅さんで、自分の役回りを充分理解されていると思います。私も周りから「いつまでやるんですか?」と聞かれますが、しんどい時もありますが、疑惑が尽きない限り、他の人が質問をぶつけないのならば、私が行かざるを得ない。行かなくなったら行かなくなったで、「何かあったのか?」「消されたのか?」と思われてしまうでしょうし(笑)。

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