昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

MEGASTOPPER DOMI
2017/08/13

【オリックス】レパートリーは100曲超 大阪桐蔭・吹奏楽部の魅力

文春野球コラム ペナントレース2017【共通テーマ:高校野球】

「大阪桐蔭吹奏楽部」“総監督”を訪ねた

 いよいよ夏本番のこの時期。毎年日本中が高校野球の話題で盛り上がりを見せる。この文春野球コラムも例外ではなく、共通テーマ「高校野球」でペナントを盛り上げる事となった。しかし、ご存知の通り自分はミュージシャン。高校球児の戦いをコラムにしても、他のコラムニストの面々ほど面白い内容に仕上がる気がしない。それに開幕当初宣言したのはミュージシャンらしいコラムでの戦い。今回はいっそ音楽の分野に振り切って書いて見ようかと思う。

 高校野球で音楽と言えば勿論アルプススタンドの吹奏楽。幸いにも大阪代表・大阪桐蔭高校の吹奏楽部は新鋭にして日本有数の楽団である。ならば会いに行こう。大阪桐蔭高校の吹奏楽部に会いに行こうじゃないか! という事で今回のコラムは「大阪桐蔭高等学校吹奏楽部」。ホールにてリハーサル中の吹奏楽部と吹奏楽部総監督の梅田隆司先生を訪ねる事にした。

吹奏楽部総監督の梅田隆司先生 ©大阪桐蔭高校吹奏楽部

 リハーサルの会場は和歌山県民文化会館大ホール。ホールに隣接するホテルの喫茶店に向かうと「おお! こっち、こっち」とテーブルに招いて頂いた。重厚な肩書きとは裏腹に、明るく気さくで豪快な先生である。生徒達に慕われる所以であろう。多忙な時期の訪問にお詫びを入れると「忙しいのは一年中だから、何も気にする事はないよ」と笑顔で答えてくれる。さすが先生! 大きいっス。とは言え、やはりリハーサル中のお忙しい先生である、ご挨拶もそこそこに早速本題に移る事にした。先生その節は大変失礼致しました。

生徒たちが楽しんで演奏することを一番大切にしたい

 まず最初に伺ったのは、高校野球ファンならば誰もが興味を持つであろう点。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のレパートリーの広さについてである。通常は伝統の曲目や応援スタイルが固定化している傾向にあるアルプススタンド。大阪桐蔭高等学校吹奏楽部のそれは「前前前世」や「恋」「上からマリコ」など高校生を中心にヒットしている楽曲を多く取り入れている。今夏は高校生の間で今最も旬な韓流アーティスト「TWICE」の名前も上がっていると言うから驚きだ。

 それについては梅田先生が即答で「生徒!」と断言する。

「選曲は基本的に生徒のやりたい曲を中心に選んでるんよ。次はこの曲がやりたい、あの曲がやりたいと生徒たちが積極的に意見を出してくる。皆がやりたい曲だから譜面を起こすのも練習するのも積極的。やはり生徒たちが楽しんで演奏することを一番大切にしたいんよね。我々が楽曲を押し付ける必要は無いんやから」

 なんて生徒思いの素晴らしい先生だろうか。余談だが大阪桐蔭高校の吹奏楽部のレパートリーは現在100曲以上。コンサートの際に梅田先生がバットで客席に打ち込んだボールをキャッチした人が、レパートリーのメニュー表から好きな曲をリクエスト出来るらしい。ホームランボール獲得に自信のある方は一度挑戦して見ては如何だろうか。

 重ねて梅田先生は「それに、色々なジャンルの曲を旬のうちに演奏出来るようになる為には、日頃から様々な曲に対応出来るようスキルを高めておく事が大切なんよ。その辺は野球も吹奏楽も同じで、ベーシックの部分をいかに日頃から鍛えておくかって事が重要になる。うちの生徒はそれをよく理解して取り組んでいる」と話してくれた。確かに大阪桐蔭のアルプススタンドは皆楽しそうである。多感な高校生に大人の価値観を押し付けるよりも、自分たちが青春を過ごした思い出の曲で応援出来るのだから盛り上がらないはずが無い。しかもそれらを支えているのが日頃の鍛錬というから素晴らしい。

「スタンドの掛け声も同じ。我々音楽家の理屈をスタンドで応援している全員が理解できる訳がない。だから感じて貰って楽しんで貰って、気が付けば同じタイミングで掛け声が揃うように練習する。大人の方が理屈で考えるから難しく感じるだけで、応援の曲に体を任せれば必然的に掛け声も揃うようになるんよ」との事。大阪桐蔭のアルプススタンドが異常に盛り上がるはずである。

甲子園での応援風景 ©大阪桐蔭高校吹奏楽部

 続けて大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏についても聞いてみた。と言うのも、スタンドで演奏する場合、ほとんどの楽団がより大音量での演奏を重視している為、ダイナミクス「音の強弱」が付きにくい。そんな中で大阪桐蔭高等学校吹奏楽部の演奏は非常にダイナミクスに富んでいるのだ。

 それについて先生は「それはね」と前置きしながら語る。「通常吹奏楽団を英語で表記する場合、ブラスバンドという言葉をよく使う。しかしウチの場合はシンフォニックバンドを名乗っているんよ。それは、いわゆるブラスの音云々よりもシンフォニーの部分を大切にしたいからね」。シンフォニック。まさに交響的である。さらに続けて出てきた先生の言葉に感動を覚える。

「ウチの吹奏楽部は基本的に部員全員が演奏に参加する。1軍や2軍といった配置をしないのは全員で演奏する事に重きを置いているからなんよ。残念な事に吹奏楽コンクールについては出場人数に制限があるので、それはどうしようもないが、それ以外は1年生から3年生まで同じステージで共に演奏をする。甲子園のアルプスは全員が演奏に参加出来るからより大阪桐蔭の良さが出るんやろうね」

 総勢174名で演奏するのだからダイナミクスに富んでいるはずである。先生、もはや発言が偉大すぎるっス。

はてなブックマークに追加