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東京五輪音頭2020に抜擢されたのが“お祭り男”星野源ではなく、“ガテン系”竹原ピストルだったのはなぜ?

速水健朗×おぐらりゅうじ すべてのニュースは賞味期限切れである

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速水健朗(左)=1973年生まれ。ライター。おぐらりゅうじ(右)=1980年生まれ。編集者。 ©佐藤亘/文藝春秋

リオ五輪閉会式に納得していない人たち

速水 東京オリンピックまで残り3年を切ったね。

おぐら ちょうど3年前にあたる7月24日には、「東京2020オリンピック・パラリンピック フラッグツアーフェスティバル ~みんなのTokyo 2020 3 Years to Go!~」というイベントが開催され、都庁の壁面にプロジェクションマッピングが投影されたりしてました。

速水 「みんなの」っていうわりには、全然知られてないけど。考えてみれば、新国立競技場のコストを巡るごたごたから始まり、公式エンブレムのサノケン騒動と、盛り上がりが続いてきたのが、ようやくネタも出尽くして、飽きてきた感じじゃない?

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おぐら 飽きてきたというか、トラブル続きだったのがようやく通常モードになったんでしょう。

速水 とはいえ、気になったのは椎名林檎を巡る報道かな。

おぐら 7月24日の朝日新聞にインタビューが載ってましたね。見出しは「媚びないおもてなしを 椎名林檎さんが思う東京五輪」

速水 このインタビューの内容はよかった。「クールジャパン」の自己イメージは勘違いでしかないよとか、日本で「カリスマの力に頼る」のは「合わない」とか。だから「国民全員と話して一番面白いことをしたい」っていう発想でリオ五輪のセレモニーに挑んだって話。

おぐら せっかく海外から人が来ても、日本には忍者も侍も芸者も花魁もいないので、「『わざわざ媚びに行って振られる』のは色恋沙汰しかり、一番みっともないでしょ」と。しびれますね。

速水 それがニュースサイト「リテラ」を通すと、「“五輪のために滅私奉公”の空気」「“一億総火の玉”と同じ発想」って書かれる。もはやフェイクニュースだよ。

おぐら 椎名林檎は、リオ五輪の閉会式セレモニーの演出と音楽監督をやって、あれはまわりでもネット上でもすごく評判よかったですけど、一方で日本中が納得したのかって考えると、ちょっと疑問は残るんですよね。

速水 そうなんだ。誰が納得してないの?

おぐら 椎名林檎もマリオもまったく知らない上の世代とか。紅白を見ながら「若いやつに媚びやがって」「最近の紅白は全然おもしろくねえ」と言っているような、SNSでは可視化されない、でもかなりの数がいる層です。

速水 なるほどね。だから石川さゆりに加山雄三が抜擢されたってことか。

おぐら それは東京五輪音頭の2020年バージョンの歌手ですね。

速水 そう。椎名林檎云々よりも、そっちのセンスの方がよっぽど問題だと思ったけど。

おぐら ネットでは、あんな高齢の人を選んで3年後に元気で歌えるの? なんて心配されてましたけど。

速水 加山雄三が今年80歳で、3年後には83歳。日本人男性の平均寿命が過去最高で80.98歳になったと報じられていて、これを超えてしまうと。でも問題は、そこじゃない。

おぐら 老若男女に知られている国民的な存在って考えると、どうしても最大公約数になるんですよ。

速水 税金を使ってやるからには、絶対に不倫騒動とかを起こさない人を、みたいな選考基準があったりして。